出版不況と戦う、角川の未来型メディア戦略 KADOKAWA取締役相談役 佐藤辰男(上)

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最大の課題は「アナログからデジタル」

三宅:私は大企業 の新規事業のお手伝いをすることが多いのですが、やり遂げられないとか、途中で苦しくなってやめるとか、本業から見ると注目されないのでつらい、という ケースがけっこうあるのです。会社として、KADOKAWAには、どんどん新しく変革していこうという風土があるのですか?

佐藤:「Changing times, changing publishing」が社是なのです。時代が変われば出版の形も変わります。つねに変化に対応していく精神を奨励しています。

三宅:変化を常態化しているわけですね。ダーウィンの進化論と同じで、変わらないものは死んでいく。それがみなさん、当たり前になっているのですね。

佐藤:それだけメディア業界に逆風が吹いているということでしょう。先ほどの3つのコンセプトのうち、「IP企業体」は新しいビジネスに挑戦していく楽しい話です。しかし、いちばん大きな課題は「アナログからデジタルへ」なのです。ユーザーがデジタルネイティヴに変わり、紙の雑誌が非常に苦しくなっている。新しい広告ビジネスも成り立たない。それにどう対応していくかです。

ひとつはKADOKAWAの得意なライトノベル、コミックなどのコンテンツをデジタル化して、直営電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」のプラットフォームに載せています。それからNTTドコモと組んで、スマートフォン向けの動画配信サービス「dアニメストア」を作りました。また、デジタルというよりECですが、1999年にはキャラクターグッズのショップ「キャラアニ」を立ち上げています。コンテンツという切り口から言うと、BOOK☆WALKERやdアニメストアが成功したことは、非常に大きかったと思いますね。

三宅:それは組織的にはどうなっているんですか?

佐藤:BOOK☆WALKERやキャラアニもいわばネット上のお店ですから、セールスマーケティング統括本部という営業部門が管轄する子会社が運営しています。顧客のIDを共有化するID戦略も始めています。これも面白い展開になってきました。

三宅:ユーザーとより強く結び付いていくことになるわけですね。

佐藤:そうですね。本も読みたい、同じ作品のアニメも見たい、フィギュアも欲しいという需要に、ダイレクトに応えられる環境を作っていこうとしています。

(構成:仲宇佐ゆり、撮影:尾形文繁)

※ 続きは4月2日(水)に掲載します

三宅 孝之 ドリームインキュベータ執行役員

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みやけ たかゆき

京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。経済産業省、A.T. カーニー株式会社を経てDIに参加。経済産業省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、産業プロデュース事業を統括し、環境エネルギー、まちづくり、医療などを始めとする様々な新しいフィールドの戦略策定及びプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、IT/通信、金融、エンタメ、流通、サービスなど幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。

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