多額の賠償を請求する名誉毀損訴訟、批判を封殺する訴訟を抑止する法整備が必要

そこで米国では、カリフォルニア州をはじめ、少なくとも25州と1自治区でスラップ訴訟を禁止、あるいは抑止する「アンチスラップ条項」を制定している。

カリフォルニア州のアンチスラップ条項(カリフォルニア民事訴訟法第425条)は第16項で、「議会は(略)言論の自由にかかわる憲法上の諸権利の有効な行使を萎縮させることを主目的とした、妨害的な訴訟が増加していることを確認し言明する」と宣言。言論の自由の範囲内の行為に向けて起こされた訴訟に対し、被告が対抗するための特別動議(反スラップ動議)を定めている。

被告側から反スラップ動議が提出されると、原告はその請求内容の変更ができなくなり、裁判の手続きが止まる。動議が却下された場合も、動議の控訴手続きを取れば、第一審裁判所で争われている裁判が即刻停止する。

また、反スラップ動議を勝ち取った被告は、弁護士費用のかなりの部分を支払ってもらう権利が生じる。

また、スラップ訴訟が棄却された後、スラップの被害者が原告とその弁護士を反訴(スラップバック)して損害を回復できるようにする手続きも定められている。提訴がスラップと認定されれば原告が社会的な指弾を浴びることと併せ、被告側にも反撃の武器を用意しているわけだ。

このように米国では、スラップ防止のための立法が進んでいる。言論の自由を最大の価値とする米国社会の理念の表れであるといえよう。

米国の後追いでスラップ訴訟が増加しつつあるわが国でも、これを抑止する法整備が早急に求められている。

(福永 宏 =週刊東洋経済)

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