シッター事件…子どもの預け先がない! 追い詰められる前に。安心シッター確保7カ条

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これに応じたのが物袋容疑者だった。そして14、15日の2日連続で店に出るために、14~16日のお泊まり保育を頼んだのだ。

保育に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんはこう指摘する。

「保育事故が起きる背景には、預ける側と預かる側の両方とも貧困を抱えていることが増えてきました。本当に必要な人に支援が届かず、そのしわ寄せが子どもたちにきているのです」

今回の事件は、決して“他人事”ではない。アエラネット会員(※注)への緊急アンケートで切実な声が集まった。

小1と2歳の娘を育てる都内在住の女性(32)は、夫は毎日、深夜帰宅の激務で子育ての「戦力外」。実家の両親は離れているし、共働きだから頼れない。正社員だけど残業を断って保育園へお迎えに行き、子どもが病気のときはベビーシッターや自治体のファミリー・サポート・センターなどを使い、「綱渡りのように」子育てをしてきたという。

次女の出産で入院したときは、長女を児童養護施設に「ショートステイ」させた。長女の親子遠足では0歳児だった次女をベビーシッターに預け、2万円かかった。必死にやりくりしてきたが、長女が学童保育になじめず、昨夏、会社を辞めた。

「公的サービスは安いけど、例えばショートステイは原則1週間前までに申請、など使い勝手が悪く、いざというときに助けになってくれない。最終手段としてシッターに頼ってきました」

「欠勤ならクビ」無理解上司の罪 結局、早期退職

都内で2児を育てる49歳女性も子育てに介護が重なり、会社を辞めた。妊娠中はつわりがひどかったが、上司から遠回しに「欠勤したらクビ」と言われた。育休復帰後は1時間時短勤務し、週2回ファミサポを利用。実母が倒れて入院したとき、会社の制度にある2時間の時短を申請したが、上司に「ありえない」と一蹴され、仕方なく介護休暇をとった。再入院した際に再度申請したら「職場に戻れなくなるかもしれないぞ」と言われ、早期退職募集に手を挙げた。

行政の保育サービスは親たちの働き方とかけ離れている。左の表は、保育サービスの特徴をまとめたものだ。基本的に早朝や深夜、病気にかかったなど保育施設でカバーできない保育を個別型サービスが補うが、子どもの年齢や人数、急な要望に応えられないなどの制限が多い。

「預かってほしいのは、子どもが病気の時なので、いつも緊急なんです。区のファミサポに登録したんですが、1週間前に予約しておかなければいけないので使ったことがありません」

都内に住む母親(35)はそう話す。

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