「麺屋 丈六」を作った元原発作業員の快活人生 安定した関西電力を40代で離れ勝負に出た

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2015年には、製麺機を導入し、店舗内で製麺する方針になった。

製麺は丈六さん自らが行っている(筆者撮影)

そこで店名を改めて「麺屋 丈六」とした。

「“丈六”は本名です。小さい頃はなかなか、“じょうろく”と読まれなくて好きじゃなかったんです。でも社会に出たら“丈六”って名前は変わっていてすぐに覚えてもらえるのでよかったですね。強みになりました」

名前を変えた後も、「ラーメンWalkerグランプリ2016・2017大阪エリア第1位、2018全国第2位」「食べログJapan Rahmen Award2016大阪第1位・2017・2018・2019ラーメン百名店WEST」など、華々しい賞に選ばれている。

変名後は、それまでは出場していなかったラーメンイベントにも出場することにした。京都競馬場で開催される「関西ラーメンダービー」や、読売テレビが開催した「森ちゃんのラーメンフェスタ」などに出場した。

「『関西ラーメンダービー』は最初に出場したときは惨敗でしたよ。おいしければいけると思ったんだけど、おいしそうなビジュアルのところに行列ができる。だから翌年からはビジュアルを工夫したり『大阪三冠とってるラーメン店です』とか宣伝文句を売ったりしましたね」

ただ、ラーメンイベントは過酷だ。3日間で4000杯のラーメンを作らなければならないこともある。

「当時が53歳で、最近も出場するとだいたい最高年齢だったんですよ。各店主は真面目にガチに必死にラーメン作ってる負けず嫌いばっかりですからね。ちょっとしんどくなって、去年から大きいイベントに出場するのをやめてます」

こんな人気店なら、弟子の志願者が後を絶たない気がするが、それがそうでもないという。

「僕は一見厳しいし、ほんとに厳しいですからね。お客さんでも、ちょけてる(ふざけてる)やつには平気で『言葉遣い注意せいや』とか怒ったりします。昭和時代のクソガンコラーメン屋です」

お金だけではないと思う、丈六さん

「麺屋 丈六」には食券機は置かれていない。食べ終わり、帰るときに現金を払う昔ながらのシステムだ。30~40人並ぶラーメン店ならば、食券機にしたほうが絶対に効率はいい。

「食券機にしたら、最初にお金払っちゃうから嫌なお客さんを帰せないでしょ。『気に入らんかったら、お金いらんから帰れ!!』って言うためには、食券機は置いちゃダメなんですよね(笑)」

と丈六さんは気さくな感じで笑う。

丈六さんは、商売だからもちろんお金のことは考えているが、それだけではないと思っている。お店が繁盛し始めたとき、隣の家も借りて連結させた。お店は倍の広さになった。そしてそこを待合席にした。

「家賃倍払って、待合所作るって普通の経営感覚で考えたらアホですけど。いやいやそうじゃないよと」

次ページ新たに待合所を設けた理由は
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