核廃絶交渉で試されるオバマ大統領の指導力--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 イランが秘密のウラン濃縮施設を保有していると発表したのを受け、オバマ大統領は世界の主要な課題のトップに核拡散を置くことを明示した。

9月に国連と米ピッツバーグで開かれたG20首脳会談の場で、多くの国はオバマ大統領の提案に賛成した。しかし、こうした会議が行われている最中に、イランが核兵器使用も可能なウランを生産できる二つ目の濃縮施設をひそかに建設していることが明らかになった。

10月初旬には、イラン政府の担当者が、国連安全保障理事会常任理事国の代表者とドイツ政府の担当者とジュネーブで会談。国際原子力機関(IAEA)による核施設の査察を受け入れることで合意した。

その一方でイラン政府は、低濃縮ウランを海外に核燃料として輸出するとも語っている。こうした政策が実行に移されれば、イランは重要な一歩を踏み出すことになる。彼らの発言が実行に移されるかは定かではないが、「イランが核拡散防止条約(NPT)を破棄し、ウラン濃縮工場を核兵器の開発に利用するのではないか」という不安が広がっている。

他方、世界の核兵器の80%以上を保有するアメリカとロシアは、今年の12月に失効するSTART−I(第1次戦略兵器削減条約)に代わる戦略兵器削減条約の締結に向けた交渉をジュネーブで始めている。交渉が成功すれば、戦略核兵器は3分の1ほど削減されることになる。

新条約が締結されれば、米上院は来年、それを批准することになる。またオバマ政権は10年前に上院で否決された包括的核実験禁止条約(CTBT)の再提出に関して議会と協議中である。

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