早慶女子があえて「一般職」を選ぶ根本理由 出世より大事にしたい「転勤回避・生活優先」

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最も数が少なかったのは上場企業、すなわち大企業における社長というトップと、重役という幹部であった。たとえビジネスの世界で超一流の仕事ができそうで、能力・実績があってしかも超難関大学の卒業生がいたとしても、企業社会は男性社会なので差別があって女性の抜擢はまずなかった。

それよりもっと重要な理由は、たとえ超難関大学で学んだ女性であっても、昔であれば上場企業で雇用されることはなかった。企業内で幹部に昇進させてよい女性の候補者すらいなかった、というのが現実である。

ところが1985(昭和60)年の男女雇用機会均等法により、採用や昇進への女性差別撤廃案が導入され、女性大卒の採用が始まった。さらにこれを機に雇用者を総合職と一般職に区別する制度が導入され、将来の幹部候補としての総合職が新しく設けられた。女性の大卒の総合職採用には難関大学と超難関大学の学生が対象となった。

それ以前には幹部候補生は男性のみであったが、その時もそれらの大学に属する人を主として採用していた伝統を、女性にも適用したのであった。ところが女性総合職の採用数は男性と比して非常に少なかったので、企業は女性総合職の採用を超難関大学と難関大学に限定することができた。

それも超難関大学に集中し、難関大学からの総合職採用数はそう多くなかった。現に東大、京大、一橋大、東工大という国立大だけに限定する超名門、超人気企業もあった。ほんの数人の女性総合職の採用数ならば、そういう策も可能であった。

ただし、せっかく総合職で採用されたとしても、結婚・出産によって、あるいはほかの理由によって中途退職する女性はかなり多かったのである。

上場企業の商社一般職の大部分は早慶女子

総合職に就く女性は超難関大学と難関大学にほぼ限られていたが、コース別雇用制度が進行するにつれ、超難関大学の中で総合職を選ばず、最初から一般職を選ぶ女子学生の増加が見られるようになった。

総合職を選択して受験してみたが採用されなかったので、仕方なく一般職で採用された、という人が多かったが、最近では意図的に最初から一般職の選択をするのである。

例えば上場企業の総合商社であれば、一昔前では一般職の大半は中堅大学に属する女子大学の卒業生であったが、最近では一般職の70~80%が早慶女子というように変化したのである。すなわち超難関私立大の女子学生が占めており、残りの20~30%も難関大学の私立大、すなわち上智、MARCHなどの大学の女子学生で占められるようになった。

早慶女子の一般職全員が最初から一般職志望であったとは言えず、一部は総合職志望から変更した女性であろうが、多くが最初から一般職志望であったとされている。なぜ早慶などの女子学生の一般職が増加したのであろうか。いろいろな理由を指摘できる。

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