温暖化ガス「25%削減」は可能か--排出権取引&環境税で実効性ある削減策示せ

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環境税との併用が有効

さらに、C&Tでは制度上対象が排出量の多い大企業中心になる。よって中小企業や家庭の削減努力を促すためにも環境税(炭素税)との併用が有効だろう。この場合、C&T対象企業は減免となる。税方式では総排出量にキャップをかけることはできないが、仕組みが明快でマネーゲームに陥ることもない。もちろん新税に対する抵抗感は強いため、税制中立などが前提だ。両者の長所短所を見極めながら「C&T+環境税」型の制度設計を模索すべきだ。

有効な制度設計を実現するためには、政治の知恵とリーダーシップが不可欠であり、その舵取り役は国家戦略室となる。まず示すべきは国内排出量の削減分である「真水」での削減目標である。これがC&Tや環境税設計の大前提となる。真水目標を明確化することで「企業も具体的に動き出しやすくなり」(桜井正光経済同友会代表幹事)、再生エネルギーの大規模導入、省エネ技術開発などの国内施策を競争原理を生かしながら推進することができる。

環境行政にも変革が求められる。これまで日本の環境施策は環境省と経済産業省の2省が担ってきた。ただ、産業界との調整のため実質は経産省主体だったといえる。しかし経産省のような経済担当官庁が環境行政に深くかかわることは国際的に見て異例だ。低炭素社会へ向け環境省が主導権を握れるか、それいかんで環境施策の実効性が問われよう。

キャップをはめられること、すなわち炭素排出は経済活動のコストであるとの認識を浸透させ、国民や企業に納得感が得られるような、いわば日本型のC&Tや環境税をつくり出していけるか。そしてこの規制を技術革新や競争力強化につなげるトリガーとすることができるか。「25%削減」が真の意味で内外から認知されるためにも、実効性ある制度設計が求められている。

(野津 滋 =週刊東洋経済)

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