9期赤字でもお買い得、楽天「Edy」獲得の自信

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 すでにクレジットカードの楽天KCを持つほか、2月にはネット専業銀行のイーバンク銀行を買収。新たにエディを加えることで、カードや銀行口座を持たなくても買い物ができるようになるため、会員の利便性向上が図れる。
 
 楽天市場の決済のうち、約3分の2がクレジットカードや銀行振り込みなどが利用される。その一方で、まだ3分の1は宅配便による代引きが利用されている。すなわち、ネット上の決済では、クレジットカードや銀行口座などの信用情報を利用することに抵抗があったり、また払い込んだものの商品が届かないと言ったトラブルを懸念する利用者が少なくないわけだ。プリペイド式の電子マネーを利用すれば、カードへのチャージ残高以上のリスクはなく決済上の不安感は低減される。

さらに、楽天にとって、楽天グループ内での決済手段の利用が増えれば、従来であればカード会社や銀行など決済会社に支払っていた決済手数料をグループ内に取り込むことができる。流通総額で年間1兆円を超える楽天グループにとって、決済手数料を取り込めるメリットは小さくない。

今後は強みである延べ7000万人の会員を対象に「楽天スーパーポイント」の貯まるサービスを大々的に展開し、エディの利用を喚起。エディの情報と楽天会員のIDを連動させ、コンビニなどリアル店舗でエディ決済をした場合にも楽天スーパーポイントを付与するといったサービスが展開されそうだ。こうした手段で稼働率を高め、決済件数を増やすことで、手数料収入の底上げを図っていく。

一方、コストダウンも一段と進める。すでにビットワレットは昨年9月に社員2割の希望退職を行ったほか、端末投資を凍結するなど経費削減を進めているところ。さらに楽天はシステム運用コストを徹底的に見直すほか、会員獲得費用も楽天のチャネルをフル活用することで大幅に削減する計画だ。場合によっては、買収に際して既存設備の評価減を実施、減価償却費も減らすことで2012年には年間ベース黒字転換を狙う。

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(丸山尚文 撮影:引地信彦 =週刊東洋経済)

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