(第26回)「四字熟語・故事ことわざ」で綴る就職支援・第十三話『就職十戒』

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(6)イメージ先行の企業選びは失敗の前兆
 (1)~(5)までのまとめは、「大手」「有名」「知っている」といった企業選びをしないでもらいたいとの切なる願いにつながる。イメージ先行こそ戒めるべき活動といってよい。また「好き」「身近」な企業選びは安易すぎる。志望動機において、「好きだから受け、入りたい」では、残念ながら小学生レベルである。配属される可能性の高い職種で、必要とされる力は何かを知り、その力があることを、具体例を挙げながら証明していくことが、書類選考突破のカギとなる。

(7)本当に「安定している企業」の内部は熾烈な競争が行われている。「安定」の定義を変えよう
 未曾有の就職難時代において、「安定」している企業に入社したいという思いは否定しない。だが、大学生が使う「安定」の意味は、「楽だ。潰れない。日々『平穏無事』に過ごしたい」となる。今時、このような企業ならば、これからの「生存競争」に勝てるはずもない。キリンとサントリーの合併・提携交渉に着目せよ。真の安定を目指すためには、「厳しい。このままでは潰れてしまう。日々競争だ」といった思考が欠かせないのだ。

(8)入社後のあなたの姿を思い描こう
 入社することだけを考えていてはダメ。むしろ、入社後を考えることこそ、他者とは違った、一味違う就職活動となる。3年後、5年後に「あなたはどのような社会人としての生活を送っているか」を絶えず意識しよう。

(9)「ナンバーワン」より「オンリーワン」を見つけよう
 企業社会に偏差値は存在しない。そこにあるのは、独自の企業戦略で、生き残りをかけている各企業の「仕事値」といってよい。この「仕事値」への共感こそ、就職活動の本質だ。あなたにとっての「オンリーワン企業」を見つけることに全力を注いでほしい。

(10)就職活動に「ひとつの正解」は存在しない
 マニュアル本などから得られる情報は、ひとつの真実である。だが、すべての人に当てはまる真実ではない。要はあなた自身が自分の眼で見て、体で感じたことこそが真実だということ。その意味では1000人いれば1000通りの真実が存在することになる。マニュアル本は読んでも構わない。だが、あくまでも参考程度にとどめておくこと。就職は受験と同じではない。○○点以上取ったら合格できる、といったものではないからだ。これまで持っていた「意識改革」こそ、失敗しない企業選びにつながる。「一歩前進」の心構えで、難局を乗り越えてもらいたい。
菊地信一(きくち・しんいち)
昭和27年仙台市生まれ。仙台一高、早稲田大学商学部卒業後、株式会社文化放送ブレーンを経て、平成2年より「現代職業工房」を主宰。この間一貫して人材採用をテーマに、採用戦略・計画に関するコンサルティングを行ってきた。企業と学生、両者を知り尽くした公正な立場に基づく本音のアドバイスは、企業セミナー、各種講演会でも好評を博している。『履歴書職務経歴書づくりの達人』(中経出版)、『就職活動のすべてがわかる本』(同文館出版)、『日経就職百科』(日経事業出版社)、『自己分析からはじめる就職活動 2010年度版』(日本実業出版社)、『キャリアデザイン入門』(光生館)など、就職関連の著書は45冊を数える。
現在、日本工業大学教授、北星学園大学非常勤講師、東北学院大学非常勤講師、コズモワールド顧問、文化放送キャリアパートナーズ学生支援部顧問キャリアアドバイザー、日本ジャーナリストセンター主任講師を務めるほか、講演・講義を行ってきた大学は85校にのぼる。
佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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