ニューヨーク「不動産仲介料廃止」のデカい衝撃 年間賃料の15%を事実上ゼロにする決定

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今後ニューヨークではインターネットなどを使い自力でアパートを探した場合、手数料は不要になるかもしれない(写真:Jitalia17/iStock)

賃貸不動産市場の競争が非常に激しいニューヨーク市で部屋を借りたいと思ったら、不動産業者を利用するのが普通だ。物件情報も内見も賃貸契約も、ほぼすべて不動産業者が管理している。

その代わり、不動産業者は仲介手数料を取る。その額は最大で年間賃料の15%。たいていは引っ越し前に借りる側が一括で支払う。

だが2月4日、ニューヨーク州は入居者が不動産業者に支払う仲介手数料を事実上、ゼロにする措置に踏み切った。

想定外だった仲介手数料撤廃

昨年、州議会で可決された賃貸住宅関連の法律の運用指針において、州当局は入居者からの仲介手数料の徴収はできないとの立場を明らかにしたのだ。これは新たな規制と借り手保護の強化の影響をすでに被っている不動産業界にとってはさらなる打撃となる。

アメリカの中でも、ニューヨークのように住宅を借りる際に不動産業者の存在が金銭的負担に大きな影響を与える都市は数少ない。

昨年の賃貸住宅関連法に続いて今回の仲介手数料撤廃により、ニューヨークは入居者に有利なルールの制定でアメリカの先頭をいく州となった。

不動産業者が受け取れるのは、貸主が払う仲介手数料のみ。ただし入居予定者が家を探すために不動産業者を雇った場合はこの限りではない。

運用指針に盛り込まれた手数料撤廃という新たなルールは、議員たちにとっても多くの貸主にとっても不動産業者にとっても想定外だった。業界団体のニューヨーク不動産業協会はすぐに、このルールの撤廃を求めて訴えを起こす方針を明らかにするとともに、会員企業に対し反対運動を行うよう呼びかけた。

「会員企業にとってこれは差し迫った問題であり、われわれは文字どおり、ありとあらゆる手段を検討している」と、同協会のレジー・トーマス総務副代表(行政問題担当)は言う。「まさに想定外で、全員が総力を挙げて取り組むべき問題だ」

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