沸騰するビジネスドラマ、解答なき時代の羅針盤? 

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 こうした傾向は映画業界でも同様だ。『沈まぬ太陽』を配給する東宝の新井重人映像本部宣伝部長は、「戦後の混乱期や、高度成長期の昭和30年代などは、今よりも刺激があり『人間ドラマ』があった。だから作品の題材になりやすい」と語る。

このように昭和を題材としたビジネスドラマが増えていることについて電通総研の東田哲明氏は「団塊世代がリタイアして、テレビを見る人が増えた。自分たちが過ごしたその当時の話に心をくすぐられるのではないか」と指摘する。

では、ビジネスドラマブームは続くのか。課題は二つある。

一つはスポンサーの問題だ。民放の番組や映画はどうしてもスポンサーの意向に左右される部分がある。たとえば「官僚たちの夏」の第1話で、“国民車”の開発に取り組む「アケボノ自動車」の本来のモデルは富士重工業だった。だが、番組のスポンサーがトヨタ自動車だったために、トヨタ傘下のダイハツ工業の車をベースに開発したクルマを撮影した。逆に番組の質を高めるために、時には企業を批判する必要が出てくる。そのバランスが難しい。

もう一つは視聴者層の問題だ。ビジネスドラマのターゲットは30代~団塊世代とやや年齢層が高め。ところが、企業が広告を出稿する際に重視するのは、消費や流行に敏感なF1層(20~34歳の女性)である。ただでさえ広告出稿が厳しくなる中、スポンサーを集めるには、やはり若い人たちに見てもらう必要がある。

若年層の問題では映画業界も同じだ。前述の東宝・新井氏も「社会派ドラマは団塊世代に受け入れられやすいが、若い人が来ないと大ヒットにはつながらない」と語る。

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