SBIの「宣言」で曲がり角を迎えたネット証券 手数料の無料化でこれからどう生き残るのか

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昨年12月末時点で約491万口座の王者SBI証券を猛追するのは、業界2位の楽天証券だ。直近1年間で74万口座を積み上げ同376万口座に。攻勢を強める。

楽天証券の楠雄治社長は、「手数料がゼロに近づくのはアメリカを見ていてわかっていた。十数年前から意識して、FXや米国株など収益源の多様化に努めてきた」と語る。

楽天証券は、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)と提携し、主に中間富裕層向けにコンサルティングを提供している。これも収益多様化の一例だ。

IFAを通じて売買された金融商品については、IFA手数料が支払われる仕組みだ。「大手対面証券に十分面倒を見てもらえていない、金融資産1000万~2000万円程度の中間富裕層にアドバイスの需要はある」(楠氏)。

楽天証券は過当競争を警戒

顧客獲得の面では、楽天ポイントを活用した顧客の囲い込み策が奏功している。同じグループ内の楽天カードと連携し、2018年10月からクレジットカードを使った投信の積み立て購入サービスを始めた。購入金額の1%が楽天ポイントとして確実に還元されることから、運用利回りを意識する投資家にとっては魅力的。楽天ポイントによる株式の購入も昨年10月に開始した。

こうした施策の結果、「敵の背中が見えてきた」と自信を見せる楠氏。ただ、「現状の各社の体力からみると(手数料競争は)かなり行きすぎ。これは遊びやゲームではない」と過当競争を警戒する。「他社が下げたときにわれわれは(下げ幅を)とどめるかもしれない。現にSBIもわれわれも信用取引の無料化には踏み込んでいない」。

委託手数料の代替となる収益源については、「既存サービスの強化と新規サービスの両方をやる。まだ言えない秘策もある」と含みを持たせた。

楠氏が過当競争を案ずるのには理由がある。実は「無料化」の発表は相次いだものの、証券会社の収益柱ともいえる現物取引の委託手数料無料化に踏み切ったネット証券はまだない。

表のとおり、各社が発表した「無料化」とはほとんどが投信の販売手数料のことだ。投信には運用の対価として購入後も一定期間ごとに支払われる信託報酬がある。販売手数料が無料でも赤字にはならない。

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