新型肺炎、中国「鉄道の現場」はどうなっている? 払戻しきっぷ9000万枚で武漢出入り回避へ

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中国では、貨物鉄道も盛んである。新型肺炎の流行以降、旅客列車は駅封鎖や本数削減など大きな影響を受けているのに対して、貨物列車は湖北省を含む全国で通常通りの輸送を確保している。全国の生産や消費に与える影響を小さくするために、貨物輸送は減少・中断させないことが重視されている。そのため、旅客数前年同期比9割減となっている旅客輸送とは対照的に、貨物は2月5日に全国で1012万トンが発送されるなど、前年同期比で同程度の輸送量を確保している。

また、武漢閉鎖以来、2月6日までの間に、鉄道によりマスク約1000万個を含む3.5万トンの防疫物資が輸送されており、湖北省への物資の搬入に大きな役割を果たしている。

中国では現在、他都市からの感染拡大を防ぐために、各都市で道路の通行止めが相次いでおり、トラックによる物流が停滞・混乱している。そのため注目を集めているのが、旅客列車に連結された荷物車を使って行われている鉄道荷物輸送だ。

各地から生鮮食品や医療器材などの急を要する支援物資が旅客列車の荷物車を使って武漢に運び込まれている。もともと春節後は荷動きが少ない時期であり、荷物車の輸送力に余裕があったことから臨機に対応できているようだ。高速鉄道の客席に直接積み込まれて搬入される物資も多い。

鉄道係員の保護

鉄道係員に新型肺炎が蔓延して鉄道輸送がストップすれば、市民生活や防疫対応に甚大な影響が及んでしまう。これを防ぐために、武漢地区では1月20日頃から、鉄道係員を自宅に帰さず、外部との出入りが遮断された鉄道敷地内の施設で寝泊まりする措置がとられている。この措置は全国に広がっており、多くの地域で鉄道係員は職場施設に宿泊し続けている。

また、旅客対応を行う、きっぷ売り場の係員や旅客列車に乗務する係員は、マスクや使い捨て手袋が支給されているほか、手洗いの回数を増やすことなどが指示されている。

車内の空気を清浄に保つために、新型肺炎の流行以降、列車のエアコンはすべて最大限に外気を取り込む設定としている。これにより、高速鉄道においては、車内の空気が5~10分ごとに一度すべて入れ替わるようになっている。また、エアコンのフィルター等の洗浄と消毒頻度を増加させている。

列車は1日の運用を終えるたびに車内を消毒しており、とくに、車内の取手やトイレ・洗面所・くずかごについては重点的に消毒している。駅構内も随時消毒が行われており、改札機や自動券売機はとくに高い頻度で消毒する対応がとられている。

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