川内原発の再稼働一番手が有力に 審査加速の圧力受けた規制委の苦肉の策

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川内原発の審査書作成までの時期的メドについて田中委員長は、「(重大事故対策などの)プラント対応を含め、まだまだ細かい課題が残っており、事業者の対応次第」として、明言は避けた。自然災害対策において残る課題には、変更した基準地震動や基準津波を基にした再審議や火砕流のシミュレーション解析、敷地内断層の活動性評価などがあるが、すでに大きな問題にはならないことは確認できたという。

 一方、川内原発を優先審査することで他の原発の審査に遅れが生じるのではという見方に対しては、「(他の原発の審査の)頻度が変わってくる可能性はある」としつつ、「一度、判断基準を共有できれば、結果的には全体として円滑に進むと期待している」と述べ、優先原発を作ることで他の事業者の対応が早まる可能性を指摘した。

 合わせて、重大事故対策などのプラント対策には申請先行組の各原発に大きな差はないとし、「立地の問題が解決できれば、他の原発も大丈夫だろう」との認識を示した。第2,第3の優先対象に入れるかは、事業者の対応次第という。昨年まで最も審査が先行していると見られていた伊方原発3号機について田中氏は、「いざという時の放射線の遮蔽などに問題がある」とコメントした。

規制委による審査に対しては、自民党議員や電力会社など原発推進派から審査のスピードアップを求める圧力が強まっている。優先枠の選定は、早めの結果を出すために規制委が考えた苦肉の策ともいえる。電力会社自らも優先枠に選ばれたいと考え、審査に対する対応を迅速化することも期待している。ただ、こうした対応は原発再稼働のタイミングを早めても、原発の安全性を高めることにはつながらない。審査の厳格性を損なうことがあっては元も子もない。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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