第2回 そうはいっても正社員は魅力的

拡大
縮小

質問4 無理して正社員目指して就活しなくてもいいんじゃないですか?

いまは景気が悪くていい就職先もないし、自分のやりたいこともまだはっきりしていないし、企業の中途採用も増えてきているし、実家住まいで家賃はかからないし、などの理由から、とりあえず、バイトでもして暮らそうかなー、と考えている人もいるかもしれません。

ですが、現実はそう甘くはありません。バイトから正規職員になる道は険しく、過去30年間、非正規職員は増え続けています。

2012年の労働力調査を見ると、正規職員は3340万人ですが、非正規職員は1813万人で増加し続けています。はじめのボタンの掛け違いがその後の人生を規定しまう可能性が高いのです(そういう状況は決して望ましいことではないので、政策的な対応が求められるところでもあります)。

平成24年(2012年)賃金構造基本統計調査で賃金を見ると次のようになっています。

 正規職員の賃金 31.7万円(年齢41歳、勤続12.7年)
 非正規職員の賃金 19.64万円(年齢44.9歳、勤続6.8年)

非正規職員の賃金は、正規職員の61.2%です。

日本では、新卒一括採用という大枠はまだ崩れていないので、できるならそのチャンスを逃さないようにしてほしいと考えます。

安定した仕事につけないと、その後、結婚できなかったり、社会的に孤立したり、といった弊害が出る、ということも指摘されていて、社会問題になりつつあります。お金の問題だけ考えれば、一人で暮らすならバイト等で十分生きていける、という判断もあると思いますが、負の面もあることも、指摘しておきたいと思います。

もっとも、終身雇用や年功賃金などの雇用慣行も徐々に崩れつつありますし、これから高齢化が進むことで、高齢者の雇用や、女性の活用なども大きな課題となっています。

ですので、これから雇用形態は多様化していくはずです。正社員、非正社員、といった分類自体が通用しなくなる可能性も高いと言えます。

いま勢いのあるいい会社の正社員になったから、今後の人生は安泰だ、というわけでなく、しっかり自分のキャリアを設計していく必要がありそうです。

中村 吉明 九州工業大学客員教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかむら よしあき / Nakamura Yoshaiaki

1987年早稲田大学大学院修士課程(建設工学)修了。同年通商産業省(現・経済産業省)入省。以後、イノベーションや産学官連携などの実務と理論研究に携わる。この間、1996年にスタンフォード大学大学院留学(経済工学修士)。2001年に東京工業大学にて経営工学専攻の博士号取得。経済産業省立地環境整備課長を経て、現在、産業技術総合研究所企画副本部長、九州工業大学客員教授などを務める。
著書に『これから5年の競争地図』『日本の水ビジネス』『ゲームが変わった』(以上、東洋経済新報社)など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT