正社員は既得権益か? 湯浅誠氏・城繁幸氏が、雇用、セーフティネットを巡り徹底討論

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用語解説

(1)第2のセーフティネット
 雇用保険と生活保護の間をつなぐ新たなセーフティネットのこと。派遣切りなどへの批判が強まる中で創設され、今秋から本格的に動きだした。職業訓練の期間中、月10万~12万円が支給される「訓練・生活支援給付金」や2年以内の離職者に生活保護の住宅扶助費と同額(東京都23区の単身者で月5万3700円)を給付する「住宅手当」などが新設された。ただハローワーク、福祉事務所、社会福祉協議会などが複雑に絡み窓口も権限も分散しており、利用者の「たらい回し」が懸念されている。政府の緊急雇用対策案では、一部ハローワークで試験的にワンストップサービスを行う方針だ。

(2)正社員の解雇規制
 経営不振時に行われる整理解雇に関する法律上の規定はないが、最高裁が示したいわゆる「整理解雇の4要件」が係争時の判断基準になっている。4要件とは人員整理の必要性、解雇回避努力、対象者選定の合理性、手続きの妥当性。ただ近年は、4要件のすべてを満たさずとも解雇を有効とする判決も出ており、緩和されていると見る向きもある。

(3)派遣法の規制強化の問題
 1985年に制定された労働者派遣法は当初は特定業種に限定されていたが、99年に原則自由化され、2004年からは製造業への派遣も認められた。だがここ数年、日雇い派遣等で違法行為が相次いだうえ、昨年末の製造業における「派遣切り」が社会問題化したことで、ワーキングプアの温床として批判が強まった。そこで民主党、社民党、国民新党は連立政権樹立に当たっての政策合意で、仕事のあるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣や製造業派遣は原則的に禁止する旨を定めた。制定来初の規制強化の法改正となる。労働政策審議会での議論も始まり、来年の通常国会で改正案が提出される見通しだ。

(週刊東洋経済編集部 撮影:吉野純治)

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