正社員は既得権益か? 湯浅誠氏・城繁幸氏が、雇用、セーフティネットを巡り徹底討論

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労働組合は味方になっているのか

湯浅 城さんの話は「ウルトラC」があるような感じがするんですよ。ここさえやればうまくいくんだ、という。でも私はウルトラCはないと思う。いくつものステップを踏まないと、いきなり欧州型の職務給になどならないし、横断的労働市場も形成されない。

 私はそれでもウルトラCに賭けてみたい。焦っているのには理由があってそれは財政です。すでに維持不可能なレベルで、私はあと10年もたないと思っています。その意味でも一発逆転を図りたい。ハイパーインフレを起こしたら、結局資産を持たない経済的弱者が路頭に迷うことになる。そうした閉塞感を打破するのは改革しかないと思います。

湯浅 構造改革路線では無理だと思いますよ。この閉塞感の震源地は低所得貧困世帯のためです。進学できない、病院に行けない、就職できない、その不安が社会全体に蔓延しているのが今です。その立て直しなくしては、それこそ国際競争にも勝てないと思います。横断的労働市場の形成のために労働組合が持つ意味というのは本来大きい。派遣村を一緒にやったような労組の社会運動が、連合傘下の大産別にも影響を与える動きが理想と感じます。

 企業別労組が解体して職種別労組ができるのは、労働市場の流動化よりハードルはかなり高く、ちょっと期待できない。今後の働き方の理想は中核的なホワイトカラーは3~4年ごとの仕事を請け負う個人事業主になっていく。そのほかに従来型の時給いくらの仕事をする人たちが連なるという形に、いや応なく進んでいくと思います。

湯浅 働きがいのある人間らしい労働、ディーセントワークを求めていくしかないと思います。期間の定めのない、直接雇用を雇用の大原則として置き、その例外には一定の縛りがある。かつ失業してもそこで生活が破綻しない、生活が成り立つ社会システムが必要だと思います。

 

ゆあさ・まこと
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長
1969年生まれ。東大法学部卒、同大学院博士課程単位取得退学。95年からホームレス支援に携わる。著書に『反貧困』など。民主党政権で国家戦略室政策参与に。

じょう・しげゆき
人事コンサルティング Joe’s Labo代表取締役
1973年生まれ。東大法学部卒。富士通人事部などを経て、2004年に人事コンサルタントとして独立。著書に『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』など。

 

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