地方公務員に襲いかかる賃金カットと待遇の二極化

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最も削りやすいのは地方公務員の人件費

それでは、民主党は地方公務員の既得権益を打破できるのだろうか。

民主党が労働組合を支持母体としている点と、労組の中でも官公労(特に自治労)が大きな力を持っている点を考慮すると、地方公務員の既得権益に大きく切り込むとは考えにくい。否、総務省の地方交付税増額要求を見ていると、地方公務員に対するプレッシャーは弱まることさえ考えられる。

もし何らかの変化があるとすれば、民主党が重視している、国の統治システムやキャリア官僚制度の改革による余波が、末端の地方公務員にも及ぶという形だろう。

たとえば、民主党がマニフェストに掲げる「国家公務員人件費の2割削減」を達成するためには、人事制度・給与制度に手をつけざるをえない。国公準拠の原則(地方公務員の給与は国家公務員の給与に準じて決められるという原則)や公務員制度としての類似性を考えると、同様の制度改正が地方公務員でも行われるということになる。

ただし、民主党がドラスティックな地方公務員制度改革を行わないからといって、地方公務員の既得権益が温存されるとは考えにくい。なぜなら今後、多くの地方自治体は、最も削りやすい地方公務員の人件費を削らざるをえなくなるからだ。

その理由は二つある。

まず、2007年に制定された「自治体財政健全化法」の下、財政健全化へのプレッシャーが高まっている。

この法律は、北海道夕張市の財政破綻を教訓にしており、地方自治体が自分たちに都合の悪い借金を隠せないようにしている。具体的には、各自治体に毎年度、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率を公表するよう義務づけている。そのため、各自治体の首長はつねに財政状況や公務員の人件費を含めた「切り代」を気にしなければいけないのだ。

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