雑談が「面白い人」「つまらない人」の決定的な差 何を言っても「雑談が続かない人」の共通点

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驚くことに、話の内容は最初の会話例とほぼ同じ(食器洗い機の購入を勧める)ですが、直接アドバイスしていないこちらの雑談のほうが、Aさんは食器洗い機を購入したくなっています。しかも、もちろん会話も盛り上がっています。

したがって、相手に何らかのアドバイスをしたいと思ったときでも、いきなり相手の感情を無視してアドバイスするのではなく、「わかる!」と相手の感情に共感するプロセスを踏んでから、話を前に進めてみましょう。そうすると、雑談も盛り上がり、アドバイスも受け入れてもらえるので、一石二鳥です。

雑談上手は「目に見えること」を褒める

雑談では、「相手を褒める」ことも会話を盛り上げる重要なアクションです。でも、闇雲に褒めても、どこか嘘っぽくなってしまって、場が白けてしまうこともありますよね。

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こういうときに役立つインプロの格言があります。それは、「Be present」という言葉です。意訳すると、「今、自分の目の前にあることにだけ集中しなさい」という意味です。

目の前にないモノやことについて話しても、共演者もお客さんも、そのことを完全に理解できる可能性が非常に低く、そうすると話のリアリティが失われてしまいます。だから、雑談の上手な人は、今、自分の視界に入っている目に見えることについて、本心から感じたことに基づいて、相手を褒めます。

一方、雑談の苦手な人は、目にも見えないこと、もっと言えば、心にもないことを言って、相手を褒めようとしてしまいます。次の会話例を見てください。

A 「すごくおしゃれなメガネですね!」
B 「え、そうですか? ありがとうございます。でも、そんな大したもんじゃないですよ」
A 「そのフレーム、何でできてるんですか?」
B 「あ、実はこれ、竹でできてるんです! ちょっと珍しいんですよ(笑)」
A 「へ~、すごい! 職人さんの手作りですか? 見せてもらっていいですか?」
B 「大丈夫ですよ!(わざわざメガネを取り外し、Aさんに渡す)」
A 「ありがとうございます。うわ~、間近で見ると、さらにおしゃれですね!」
B 「いや、それほどでもないですよ(笑)」

Bさんはおそらく恥ずかしがり屋タイプなのでしょうが、とてもうれしそうですね。注目してほしいのは、Aさんが「フレームを褒めている」点です。
「Bさんのメガネのフレームが普通の眼鏡とはちょっと違う(その上におしゃれである)というのは、その場で確認できる「目に見えること」です。その場の事実に基づいて語っているので、Aさんの発言は嘘がなくリアルに聞こえます。だからBさんはAさんの言葉をすんなり受け入れ、雑談が盛り上がるのです。

一方、目に見えない曖昧なことで褒めようとすると、どうなるでしょうか。

A 「最近Bさん、会社でご活躍されてるんですってね!」
B 「え、僕がですか? 全然そんなことないと思いますよ」
A 「この前、御社に伺ったとき、C部長がBさんのこと、しきりに褒めてましたよ」
B 「(いや、C部長は誰でも褒めるんだよ)そうだったんですね。それはうれしいな」
A 「(あれ? たいしてうれしそうに見えないな)どうしたんですか? もっと、自信持って喜んでいいことだと思いますよ」
B 「そうですね。ありがとうございます(上から目線でうるさいな! 事情も知らないくせに……)」

このように、目で見えないことについて発言してしまうと、よかれと思って発言したことでも、相手の機嫌を損ねてしまうことがあります。

よくあるのが「中年の人は、若いと言われると喜ぶはずだ」といった固定観念に基づいて褒めることです。目の前に見える事実を踏まえず、安易に褒めたりすると、嫌味に聞こえがちです。というわけで、雑談で何を話すべきか迷ったら、目に入ってきたモノやことに基づいて、それをトピックに話してみましょう。

渡辺 龍太 放送作家、即興力養成講座講師

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わたなべ りょうた / Ryota Watanabe

幼少期から口数が極端に少ない性格だったが、アメリカ留学時に受けたインプロ(即興力)がきっかけとなり、以降日本人向けの即興力研究に注力。帰国後、NHKのディレクターに就任。番組出演者への即興力アップの指導も開始。現在は大手芸能事務所「浅井企画」のプロ芸人向けのアドリブ講座や公開講座でインプロ講師としても活躍中。

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