病気ではない、特性をもっているだけだ--『アスペルガー症候群』を書いた岡田尊司氏(精神科医)に聞く

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 アメリカのシリコンバレーなどでは1割ぐらいの人が該当するともいわれている。それは逆にいえば、「アスペルガー・タイプ」の人を企業が必要としているともいえよう。現代という時代がそういう特性の人たちの立場を有利にしている。ただ、アスペルガー・タイプもそれが濃くなりすぎるとマイナス面が強く出る。ほどよくそういう傾向があると有利なようだ。

医学的に言えば、アスペルガー症候群を含む発達障害はちょうど富士山のような山に例えられる。その頂の部分に、従来からの自閉症があり、その裾野に、アスペルガー症候群や特定不能の広汎性発達障害が広がり、さらにそれは、健康なレベルの人にも見られる傾向に連続的に続いている。アスペルガー症候群は軽いほうで、頂は自閉症といわれていて障害がきつい。

--現代はアスペルガー・タイプにとって有利……。

ハイテクを含む先端産業は、ますます専門的で高度な技能を必要としている。こういうタイプの人はそういった技能に優れている人が多い。

同時にマイペースの人も多い。主体性を持って、自分のペースで仕事をやらせるとすごい。ただ、押し付けられると全然力を発揮できない。さらにはプレッシャーやストレスによって潰されてしまうこともある。つまり、皆と仲良く和気あいあいと仕事をするのは苦手だが、本人は往々にして高い創造性と生産性を達成する能力を持つ。

落ち目とはいえ、アメリカがあれほど技術的に優位に立っているのも、そのタイプの人たちを優遇しているからだろう。働き方もいろいろ変わってきている。たとえば、勤務時間にフレックスタイム制が導入されているが、こういうタイプの人にとって働きやすい。そうは自覚されていないのだろうが、クリエイティブな能力を持ったアスペルガー・タイプの人にとっては適した制度だ。SOHOという働き方、これもこのタイプの人たちにとって働きやすい。このへんの認識は、それこそ企業戦略を考えていくうえで、いまや日本でも重要だ。

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