ビットコインという「通貨」の正体 なぜ日銀・黒田総裁は「通貨でない」と発言したのか

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ここで、価値尺度はどうでもいい。価値尺度として使われることは、法律で法定通貨と規定されるのと同じことで、貨幣が貨幣として使われるきっかけとはなるが、そのきっかけの一つの要素に過ぎない。アルゼンチンや過去のブラジル、エクアドルで実質的に自国の法定通貨ではなく、米国ドルが使われていたのと同じことだ。かつての共産圏に旅行した場合に、実質的には米国ドルを使うのと同じことである。

だから、ビットコインが価値尺度として機能しなくても、それが通貨であることを妨げない。だから、ビットコインの価格が急騰し続けたり、乱高下したりすること自体が、ビットコインが通貨でなくなること、通貨として機能しないことを意味しているのではない。そうではなく、保有している人々が、ビットコインを決済通貨として使うことを拒否していることが、ビットコインが「通貨でない金融商品」としている理由なのだ。

決済通貨であれば、取引所は要らない。取引に使うのだから、取引所は要らないのだ。取引所がいるということは、それは別の通貨と取引することが必要だからであり、それは売ることが必要なのであって、決済に使わない通貨、あるいは金融投資商品として投機的にのみ使うということなのだ。

実は、ドルなどの通貨が通貨でなくなる瞬間はある。それは資産防衛のために、貴重なドルを守ることに人々が走った場合だ。超インフレになった場合は、資産を防衛するために、土地か米国ドルに走る。これが新興国や途上国における金融危機の対応であるが、政府も信用できなければ、土地は流動性もなく、売れる保証はないので、やはり米国ドルに走る。そして、ドルの量が限定的であれば、それは誰も使わず、資産防衛のために保蔵する。しかし、保蔵されれば、流通はなくなるので、それは、信用は失われないが、通貨であることをやめる。

では、このとき、ドルは現地通貨に対して暴騰することになるか。実はそうはならない。なぜなら、誰もドルを現地通貨に交換しようとはしないから、価格が付かないのだ。だから、市場価格の暴落は止まるが、それは価値が回復したのではなく、価値がゼロになったため、取引されないだけである。

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