コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる 飛沫感染と「接触感染」をどう避ければいいか

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コロナウイルスはどのようにして予防すればいいのか。写真は、コロナウイルスによる肺炎患者への対応を想定し、長崎大病院で行われた訓練(写真:共同通信)

コロナウイルスの感染経路は、インフルエンザ同様、基本的には飛沫感染と接触感染である。コロナウイルス自体の大きさは直径100ナノメートル(1nm=1mmの100万分の1)程度と非常に小さいが、風邪やSARSを前提にすれば、結核や麻疹のような空気感染は通常は考えにくい(ただし、SARSでは密閉空間において空気感染の可能性が示唆されている)。

飛沫とは、くしゃみや咳で飛んでいくしぶきのことで、感染者のウイルスが含まれる。口や鼻の粘膜に付着すれば、そこから感染が起きる。ただし飛沫は5マイクロメートル(1μm=1000nm)程度の大きさがあり、重みのせいで空気中を漂う間もなく落下してしまうため、空気感染ほどの感染力はないと言える。

とはいえ、感染者の飛沫や糞便に由来するウイルスは、体外に排出された後すぐに死滅するわけではない。感染者が口や鼻を触るなどして手にウイルスを付着させ、その手で触った物が感染源となる。汚染物に触れた他者が、その手で自身の口や鼻を触って起きるのが、接触感染である。また、季節性インフルエンザでは見られないが、SARSでは目の結膜からの感染も報告されている。

「SARS」より懸念すべき材料もある

SARSより懸念すべき材料もある。SARSでは発症者をすぐに隔離するなどの措置により、感染の広がりを抑えることは比較的容易だった。SARSウイルスは、潜伏期間中には他者への感染力はなく、発症後10日目頃が最も感染力が強い、という特徴があったからだ。また、子どもへの感染も極めてまれだった(WHOによる)。

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これに対し、今回の新型ウイルス感染症では、潜伏期間中にも他者へ感染させる可能性が指摘されており、不顕性感染(感染しても症状が出ない状態)も多く、初期症状も軽いとされる。体調の異変を感じて早めに受診しても、新型コロナウイルス感染症と診断を受けずに後日、再度受診して判明するケースが後を絶たない。なお、子どもへの感染例も報告されているが、SARS同様に少数であり、軽症である。発病や重症化に年齢が大きく影響するようだ。

日本でもこの先、街中を歩いているだけで感染するような状況となっても、何らおかしくはない。感染の広がりによっては、東京パラ五輪どころではないだろう。

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