「新型肺炎ショック」iPhone生産に広がる暗雲 店舗は一部閉鎖、メーカーの操業再開に遅れ

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
拡大
縮小
新型肺炎の流行で、中国のスマートフォン生産工場への影響が広がっている。写真は中国・東莞市にあるファーウェイのスマートフォン組み立てライン(撮影:梅谷秀司)

「この数日間、中国での販売に影響が出た」

1月28日に2019年10~12月期の決算を発表したアメリカのアップル。ティム・クックCEO(最高経営責任者)は電話会見で、iPhoneの販売に新型肺炎の影響が出始めていることを明かした。

2019年10~12月期の純利益は222億ドルと最高益を記録したが、2020年の業績見通しには暗雲が漂い始めている。2020年1~3月期の売上高は630億~670億ドルになるとの予想を公表。クック氏は新型肺炎の影響を考慮し、「広い幅がある予想を出した」と話した。

iPhone製造工場の操業再開に遅れ

中国国内のiPhone販売店舗はすでに営業時間を短縮したり、店舗を閉鎖したりしている。中国政府も、春節休暇期間を当初予定の1月30日から2月2日に延長。店舗によっては販売休止期間を延長し、新たに休店する店舗が出るなど、「新型肺炎ショック」はまだまだ広がりそうだ。

画像をクリックするとコロナウイルスに関連する記事の一覧にジャンプします

春節期間の延長は製造面にも影響が出る可能性がある。「iPhoneの売り上げが改善していただけに、生産調整を強いられるのは残念」。iPhoneの受託製造を手掛ける台湾系サプライヤーの幹部は、iPhone生産への影響を懸念する。

アップルはiPhoneの製造を電子機器受託製造サービス(EMS)最大手の台湾・鴻海精密工業やペガトロンなどに委託。iPhoneの製造工場は一部モデルを除いて、ほぼすべてが中国にあり、これらの工場が春節休暇を延長するなどにより、操業再開が遅れる見込みだという。

地方政府独自の対応も操業再開に影響を与えそうだ。上海市や浙江省はさらに遅い2月10日を就業開始日に指定。江蘇省や広東省なども2月10日からの操業再開を決めた。いずれも電子機器を生産する工場が多い沿岸部の地域で、iPhone以外のスマホの生産にも影響が出そうだ。

台湾系EMSの関係者は、「基本的には中国政府の指定日(2月3日操業開始)を守り、工場の所在地によって地方政府の指示に従うことになりそうだ」と拠点ごとに対応が分かれざるをえないと話す。「おそらく1~3月の当初生産計画よりも全体で(生産量は)約1割減少する」(同)。

サプライチェーンへ影響が広がることを懸念して春節休み明け1月30日の台湾株式市場は大きく値を下げて始まり、台湾加権指数は5.75%の下げとなった。鴻海精密工業の株価は制限値幅の下限(ストップ安)である9.9%安まで下げた。

次ページ電子部品メーカーの業績へ広がる懸念
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT