ヤマト、ネット通販の配送で周回遅れの改革 「自前主義」の脱却はどれだけ実を結ぶのか

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EC最大手のアマゾンは、デリバリープロバイダと呼ばれる地域ごとの中小運送会社を組織化。ヤマトの運賃値上げで大打撃を受けたアスクルも同様に、中小運送会社による配送網を構築中だ。2018年7月に自前の物流拠点や配送網を構築する「ワンデリバリー」構想を掲げた楽天も、自社の配送サービスである「Rakuten EXPRESS」の展開エリアを拡大している。

中小運送会社だけでなく、個人ドライバーを活用する動きもある。アマゾンは個人ドライバーに配送委託する「アマゾンフレックス」を2019年1月に本格稼働させた。既に東京、神奈川、千葉、愛知、宮城、北海道の6エリアで展開している。2020年1月には、福岡での事業展開を見据え、現地で個人ドライバーを集め始めた。

カギを握る関係の再構築

佐川急便や日本郵便は配送委託先の開拓で既に先行しており、後発のヤマトが順調にパートナー企業を増やせる保障はない。ドライバー不足が叫ばれる中、配送業中堅の丸和運輸機関やSBS即配サポートは、車両リースなどの支援により業務委託ドライバーの独立開業を後押しし、配送委託先の確保につなげている。

ある運送会社の幹部は「ヤマトの配送委託は(配送個数などの)条件がすぐに変わるので、怖くて引き受けられない」とこぼす。ヤマトは2017年9月から配送の自前化を進めた際、ほとんどの外注先の契約を切った。そのときの記憶が鮮明に残っている運送会社が、ヤマトの方針転換に応じるのか。委託先の拡大には関係の再構築も重要なポイントだろう。

既にヤマトは、都内の一部エリアでZOZOやユニクロ、アマゾンの荷物の配送を外注先に委託し、ECの新配送サービスの試験運用を進めている。ただ、「ヤマトは配送効率が悪く、ドライバーの確保にも苦戦している」(別の物流企業幹部)という声も聞かれる。オペレーションが混乱することなく、需要に合ったサービスを広げられるか。道のりは平坦ではない。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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