大攻勢の日本電産、定まらぬ「ポスト永守」 電気自動車向けモーターで5000億円投資

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日本電産自体の業績に関しても、圧倒的なシェアを持つハードディスクでは収益性の高いニアライン向けが年明けから好調なほか、製品によってばらつきがあるものの、産業向けも2019年12月以降需要が戻ってきているという。さらに、5G関連での引き合いが強まっていると説明した。

決算とともに注目を集めたのが、永守氏の後継者と目される社長人事の行方だ。2019年末には、日産のナンバー3である関潤・副COO(最高執行責任者、58歳)が退任し、日本電産に次期社長含みで移籍することになった。

関氏の処遇は「ノーコメント」

ただ、日本電産では日産系の部品メーカー・カルソニックカンセイ(現マレリ)と日産を経て、日本電産に入社した吉本浩之氏が2018年6月に社長に就いている。永守氏は「潜在能力は高い」と吉本氏を評価し、権限委譲を進めていたかのようにみえた。

永守氏の後継者をめぐっては、かつて吉本氏以外にもカルソニックカンセイを経て日本電産に入社した呉文精氏も有力視された。だが、呉氏は永守氏から与えられた経営目標を達成できず、2015年に退職。後に半導体大手ルネサスエレクトロニクスのトップを務めた。吉本氏も呉氏と同じような道をたどるのか。いやが応にも注目度は高まっている。

永守会長(右)は吉本浩之社長(左)を「潜在能力は高い」と評価していたが・・・(撮影:今井康一)

だが、会見の場で永守氏は関氏について「ノーコメント」と述べるのみで、すでに関氏が日本電産に入社していることは明かしたものの、それ以外については答えなかった。

今後、改めて後継者候補の競い合いがはじまるのか。関氏は社長になる希望があるから日本電産に入ったとの見方がもっぱらだが、重要な経営上の判断はいまでも永守氏の強いリーダーシップのもとで決定されており、永守氏の後継者になるのは容易ではない。

2019年1月に日本電産が開催した新年の賀詞交歓会で、永守氏は予定していた自身の挨拶を中止。「これからは吉本を表に出していく」と永守色を消していこうとしていた。

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