京都・奈良対立のリニア「大阪まで延びない」説 ルートを巡る対立で名古屋以西へ延伸できない?

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リニア新駅設置で観光客増狙う奈良

奈良市観光協会PRキャラ「しかまろくん」

飛鳥の石舞台古墳や高松塚古墳、世界遺産・吉野山の桜──。奈良が世界に誇れる観光資源が集結するこれらのエリアは、県南部に位置することもあり、観光客は今までは足を運びにくかった。リニアが通過すれば、首都圏からの観光客は時間の制約が大幅に緩和されるため、リニアの新駅を玄関口に、奥まで出向くこともできるようになる。

「リニア駅の奈良市設置により、県内の観光資源に、深くタッチをしていただくことが可能になる」と、奈良市の仲川げん市長は強調する。 

リニア開通は奈良にとっては「悲願」そのもの。1964年の東海道新幹線開業後、京都の観光客は着実に増加した。60年代は2000万人規模だったものが、直近は7000万人規模に達している。その京都以上に古い歴史を持つにもかかわらず、観光客数で京都に7倍もの圧倒的な差をつけられた奈良の地元には、「東京から最も遠い観光名所」との自虐ネタもあるほど。

煮え湯を飲まされ続けてきただけに、今回のリニア通過への期待は高く、「観光客が現在の年間1300万人から1000万人押し上げられ、県内需要は現行よりも330億円増加する」と、奈良側は試算する。

古都バトルの行方はどうなるのか。最終的に通過駅を決定するのは事業主体のJR東海で、同社が重要視しているのは、なるべく直線で、しかも短時間での移動が可能なこと。となると、「JR東海は三重と奈良を通過するルートを選択する可能性が高いのではないか」と、『リニアが日本を改造する本当の理由』などの著書がある市川宏雄・明治大学専門職大学院長は分析する。 

実は今、関係者の間で持ちきりの話題がある。JR東海は「うましうるわし奈良」と銘打った旅行キャンペーンを、近年大きく展開している。奈良県内には在来線の路線がないにもかかわらずだ。これが「JR東海はリニア開通をにらみ、奈良ルートの機運をじわりと盛り上げるために、キャンペーンに力を入れているのではないか」との臆測を呼んでおり、その真偽が気になるところだ。

18年のアドバンテージ どう動く? 盟主・大阪

こういった古都の動きに対し、関西の盟主・大阪は静観視の構えだ。「どちらのルートがよいかは微妙な問題なので、今の段階(13年12月時点)で言う状況にはない」(森詳介・関西経済連合会会長)。

ルート問題よりも、むしろ大阪が関心を寄せているのは全線開業の時期である。「45年に計画されている全線開業の時期をできれば東京─名古屋と同じ27年に、それがダメでも前倒しで実施してほしい」というのが本懐だ。関西経済連合会の西村和芳・地域連携部次長は「名古屋と同じタイミングで名古屋─大阪を開業することは、日本全体の成長という意味でも必要なこと」と話す。

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