米国人だって、男女の役割に苦しんでいる 超人・サンドバーグみたいには生きられない

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実は、”バリキャリ”母親世代と同じ価値観?

――ちなみに、日本の20代、30代のワーキングマザーの母親は、そのほとんどが専業主婦です。ところがエミリーさん世代の母親は、そのほとんどがワーキングマザーですよね。彼女たちは、一生懸命企業で働き、権利を勝ち取ってきた。なのに、娘は1周回って主婦に逆戻り。そのことについて母親世代は残念がっていませんか?

もちろん、「これじゃ、1950年代に戻ったも同然」と思う人たちもいます。ただ、「ハウスワイフ2.0」と母親世代が求めていたのは、結局、同じ価値観だと思うのです。

――その価値観とはフェミニズムですか?

ええ。その実現の仕方が違うだけ。母親世代は、企業社会で女性の正当な権利を勝ち取ろうと戦い、実際、いくつものバリア(障壁)を崩してきました。ですから、私たち娘世代は、きっと自分たちが大人になる頃には、女性がもっと働きやすい社会になっているだろうと期待して社会に出た。

でも、いざ企業社会に出てみたら、それほど、男女平等が進んではいませんでした。だから、若い女性たちは母親世代にあまり感謝していません。そして、現在もなお、企業社会で戦い続ける母の姿を見て、ああはなりたくないな、魅力がないなと思っているのだと思います。

だからこそ、「ハウスワイフ2.0」は、変わらない企業社会に見切りをつけ、自分たちは別の生き方をしようと模索しているのです。

私が取材した人の中には、「仕事を辞めて専業主婦になるのは、新しいフェミニズムよ」と語ったママもいます。主婦という選択肢もまた、女性が組織で働くことと同様に、女性の権利だ、とね。

――娘の目には、バリバリのワーキングマザーだった母親は、魅力的に映らなかったのですね。かなり驚きです。

彼女(母親)を尊敬はするけれど、あの生活には何かが欠けていたんじゃないの?という印象があるのだと思う。私が取材した、銀行の副頭取にまで出世した母親を持つ女性は、「母は女性が世界を支配できると信じて疑わなかったけれど、実際はいつも悩みを抱えていた。一生治らない糖尿病を患って、人生に不満だらけだった」と言っていました。そんな母親を見て、彼女は、会社は社員の幸福なんて気にも留めていないと、つくづく感じたそうです。

つまり、母親のようにあくせく働いても、いいことなんて何もない。「女性は仕事も家庭も子どももすべて手に入る」と言われて育ってきたけど、悪戦苦闘する母親を見て、娘世代は、そもそも、そこまで苦労する必要があるのか? と感じてしまう。そして、「すべてを手に入れるのは無理に決まっている」と痛感しているのです。

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