マイナス面が際立つ専門職大学院の現実、問題は需給ギャップ?教員不足?

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法科以外も軒並み 志望倍率1倍台

そもそも法科大学院の入学選抜における志願者自体、創設初年度は7万人以上だったのが05~07年度は4万人台、08年度は3万人台にまで減少。今回公表のデータで、これまで法科大学院を多くつくりすぎた、もしくは入学定員の枠が大きすぎたことが、数字のうえからも証明されたことになる。法科以外の社会科学系専門職大学院も軒並み志願倍率1倍台(文科省「専門職大学院における教育研究活動等に関する実態調査」08年5月)と低調で、学生の質の確保に問題がある。

10月5日に文科省で開かれた中央教育審議会大学分科会の大学院部会専門職学位課程ワーキンググループ(WG)でも委員から「そもそも専門職大学院をつくりすぎたのではないか」との声が上がり、さらに従来の大学院にない特徴である「実務家教員」を含めた質の高い教員が十分でないなど多くの問題が指摘された。今年7月、10年開講を目指し準備の進んでいた都内5女子大の「共同教職大学院」認可申請が取り下げになったのも、参加校の一つ、昭和女子大で研究科長に就任予定だった実務経験が売りだったはずの男性教員に経歴詐称があったのが原因だった。

「毎年社会人の入学者が4割に上るのは、特許庁で特許技監まで務めた研究科長の人脈で武田薬品工業や松下電器産業(現パナソニック)などで知財担当だった教授陣がそろっており、企業にお勤めの方や弁護士・弁理士といった皆さんにとって魅力ある、実践的な内容を盛り込みながらの掘り下げた教育内容が支持を得ているのだと思う」。そう話す大阪工業大学大学院(大阪市)のように、実務家教員の人材確保に胸を張ることができる専門職大学院は、決して多いとはいえない。同校は入学定員30人規模ながら全国に2校しかない知財の専門職大学院で人気が高い。

だが、社会人入学者が4割超といっても、一方で社会人経験をせず入学する学部卒業生が多いのも事実。同大学院の場合、修了後の就職先には優良企業が並ぶことを考えると結果オーライともいえるが、専門職大学院の本来の設立目的は、社会人の専門性をより高めることにある。社会人の入学者をいかに増やすかは、他の専門職大学院にも共通する課題といえる。

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