“学士力”をいかに身につけさせるか--問われる大学の教育力、連携も活発に

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 大学連携の取り組みは、前述した広島大学も含め中国地方の大学が参加する「教育ネットワーク中国」でも進められている。その一つが、「高大(高校・大学)連携」だ。

たとえば、広島県では広島市を中心に都市部の大学数は多いが、同県庄原市や三次市など山間部の過疎地域に大学は1校のみ。そのため、同地域の高校生の進学率は35~50%と広島県全体の進学率57・9%より低い。

そこで、同地域の高校と協力して公開講座を実施。「大学入門」から、地元の経済事情や高校生の科学的関心に沿った講座など、地域特性を考慮しつつ内容面にも工夫を凝らしている。ITインフラを活用した遠隔授業にも積極的だ。

高校生に高度な学習機会を提供し、大学への進学意識を高めてもらうことに加えて、「将来は地元に戻って地域貢献できる人材の育成や高校自体の魅力づくりにも役立つ」と、同ネットワーク代表幹事の市川太一広島修道大学教授は語る。

こうした事業は「即効性が低く、目に見える成果は出にくい」(市川氏)が、多様な大学が連携することで、さまざまな学力レベルと関心を持つ高校生の受け皿となることが可能という。大学教員による授業で知的関心を刺激し、進学意欲が高まることで入学志望者増につながれば、大学側のメリットは大きい。

単科大学など規模の小さな大学では、高校生向けの講座内容を工夫することで、大学の授業の改善自体につながる効果もあるという。また、単独では難しい文科省などからの公的支援も、連携プロジェクトなら得やすいという事情もあるようだ。

少子化が進み、首都圏をはじめ大都市の大学に学生が集中し、地方大学はその魅力づくりに四苦八苦しているのが現状だ。もちろん、いわゆるブランド大学といえども、将来にわたってブランドを維持していくためには安閑としてはいられない。「魅力ある大学」のカギは、学生をいかに育てるか、その教育力にある。単独で、あるいは大学連携を通して、大学の質向上を図る動きは今後もますます活発になっていく。

(週刊東洋経済)

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