インフレVSデフレ、どちらが起業しやすい? デフレで企業淘汰が進めば、起業は増えるのか

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 最新
拡大
縮小

起業や転職が活発になるためには

そうした方々は、以下のような考えなのかもしれない。つまり、デフレという厳しい経済状況の中で、既存企業の淘汰が進む。そうした中でこそ、新規ビジネスが勃興しやすい。また、バブルのときのように、景気が良い時は、必要に迫られ起業する必要もなく、また既存企業の淘汰が進まないので、起業・開業が停滞する、とお考えなのかもしれない。

こうした考えとは反対に、筆者は、「起業や転職が活発になるには、景気が良くなり、仮に失敗してもリカバリーできる経済状態の方が、幅広い方が起業などにチャレンジする機会が増える」と考えていた。どちらが正しいのだろうか?

起業(開業率)の動向について、さまざまな解釈がある背景をたどっていくと、日本の会社の開業率の計測には複数の基礎データが使われ、いくつかのバージョンがあるという事実に行き着く(下図)。

例えば、総務省の事業所統計では、開業率はバブル期に下がり90年代半ばまで低下、その後デフレが本格化したタイミングで開業率が若干上昇した。

確かに、この統計によると、バブル期に開業率が先に低下、その後は開業率が上昇したということになる。ただ、同調査によれば、開業率が90年代後半から持ち直しても、その後ほぼ横ばいで推移する一方、廃業率の上昇傾向がはっきりしている。廃業率上昇、すなわち既存企業の淘汰が進んでも、開業率はほとんど上昇していない。

一方、厚生労働省の雇用保険のデータを見てみよう。このデータに基づけば、バブル期に開業率が上昇し、バブル崩壊後に開業率は低下している。そして、前出の事業所統計のデータ同様に、1990年代後半から開業率の停滞が続く中で、廃業率が上昇している。

次ページ経産省データVS厚生労働省データ
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT