転職ブームで、盛り上がる“条件闘争” あの手この手の「引き留め工作」との綱引き

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景気が悪いときの転職事情とは大違い

そもそも景気が悪い「買い手優位」の時期に転職しようするのは、職場で上司とけんかした、会社が不況でリストラされた……と「わけあり転職」の人が大半。ところが「売り手優位」になると状況が変わります。現在の職場から、さらなるステップアップを狙って動き出す、

《いい仕事、いい条件なら転職》

を志向する人の増加。現在の職場に対する不満ではなく

「自分の市場価値を確かめたい」

が転職活動の目的になるのです。まるで日本プロ野球(NBP)のFA(フリーエージェント)になった選手と似たような発想ですね。

ちなみにFA制度とは、メジャーリーグの制度を参考に1993年から施行。出場選手登録(一軍登録)145日を1年として換算し、規定の年数経過で「FA権」を取得。このFA権が他球団含めて自由に交渉できることを意味し、毎年60人程度が取得します。しかし、実際に行使するのは5人程度。現在、日本プロ野球の選手は約1000人。つまりFA権利で移籍する対象選手は全体の0.5%にすぎません。

余談ですが、硬式野球でプレーする高校生は、学年ごとに約5万人。甲子園を目指して、さらにプロ野球を夢見て、活躍してFA権を取得できるのは同学年で1~2人。もはや、0.01%と宝くじに当たるような確率です。それは、鮭の孵化した稚魚が、回帰する確率より低いのです。

そんな選ばれたFA選手が、所属球団を探すための転職活動には、過去の実績という前提条件があります。ところが売り手優位な転職市場になると「誰もが」とは言いませんが、かなりの数の人々が「自分の市場価値を確かめたい」と言い出します。もっともなことのように思えますが、果たしてこれは、正しいことなのでしょうか?

あっけなく「内定辞退」する人たち

こうした《いい仕事、いい条件なら転職》の心積もりで行う

=「市場価値探求型」転職活動

ができる時期は限られます。景気が悪くて会社の求人がなければ不可能です。ゆえにチャンスはチャンスとして有効活用すべきでしょう。ただ、プロ野球のFA選手までいかなくても、自分なりに市場価値を確かめることができる

《これまでの仕事における実績》

を棚卸ししておくことが重要です。

・経験した職種

・経験した職務

・それぞれの職務における実績

を自分なりに整理(自己分析)してみましょう。もし、自分なりの実績が書けないとしたら、転職するタイミングは、仕事で実績を上げてからのほうがいいかもしれません。

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