シェール革命、ロシアと中国の外交力抑制か

拡大する「天然ガス貿易」がもたらすもの

3月5日、今後見込まれる液化天然ガス(LNG)の世界的な貿易拡大は、ロシアと中国の外交力を抑制する可能性がある。写真はペンシルバニア州の天然ガス採掘現場で、2012年3月撮影(2014年 ロイター/Les Stone)

[ヒューストン 5日 ロイター] - 今後10年間に見込まれる液化天然ガス(LNG)の世界的な貿易拡大は、ロシアの欧州に対する外交政策上の影響力を抑制するとともに、LNG輸入が増加している中国に対し、世界の諸問題でより前向きな役割を果たすよう促す可能性がある。

こうした見方は、ヒューストンで開催された会議「IHS・CERAWeek」に参加した多数のエネルギー専門家が共有しており、ロシアが軍隊でウクライナのクリミア半島を事実上掌握した際に行使した手法で近隣諸国に自国の権利を主張できる余地が将来、狭まる可能性があることを意味している。

ロシアはここ何年かにわたり、外交上の対立からウクライナへのガス供給を削減してきた。これによって欧州へのガス供給が寸断される事態となった。

欧州のガス市場におけるロシアの重要な役割は、2020年以降も続く公算が大きいが、世界的にシェールガスの生産が増えてLNGの積み降ろしターミナルが多数稼動するのに伴い、長期的にはロシアの役割は低下しそうだ。

そうなると、天然ガスの貿易はロシア─欧州間(一部はウクライナ経由)などのパイプラインから水上貨物輸送へと移行が進むなかで、買い手側の交渉力が強まり、供給者側の価格決定力は弱まることになる。

ロシアのエネルギー問題に詳しい関係者は「ロシアは長い間、ガスの輸出力で武装しており、それを行使して人々を動かしてきた。これがウクライナを束縛し続けた構図だ」と指摘。10年も経てばそれ以降は「ロシアはガスをこのような手法では使えなくなるだろう。彼らもそれを認識している」と話した。

欧州連合(EU)の天然ガス需要は現在、年間で4850億立法メートル。このうちロシアは1600億立法メートルを供給している。ロシアから輸出される天然ガスの3分の1程度はウクライナ経由となっている。

ウクライナ情勢の緊迫化は、米議会内でLNG輸出施設の承認を加速するよう米エネルギー省に求める動きを促した。これまでに6件の施設が承認されている。

米国からのLNG輸出が本格化するのは2017年以降と見込まれる一方、オーストラリアやカナダ、カタールなど他の輸出国からの供給が欧州の需要を満たすのに役立つ可能性がある。

外交問題評議会のリチャード・ハース会長は「われわれは、ロシアのような国に依存する状況から複数の国家を脱却させるのにエネルギー輸出を活用できる。それは米国の貿易収支を均衡させるうえで役立つうえ、世界情勢の進展から米国が受ける影響を低減することにもなる」と述べた。

米シェールブームで構図変貌

米国では来年の石油生産量が43年ぶりの高水準となる日量930万バレルに膨らむと予想されており、ワシントンでは原油輸出規制の緩和について協議が進められている。

一方で世界のガス貿易拡大は、中国の外交政策を変える可能性がある。中国は石炭火力発電により発生する大気汚染対策に取り組む一方、今後も旺盛な天然ガス需要が続くと見込まれている。天然ガスは現在、中国のエネルギー構成の約5%を占めている。

カリフォルニア大学デービス校のエイミー・マイヤーズ・ジャフェ氏は先月開かれた天然ガスの地政学に関するフォーラムで「世界的の(ガス)供給への依存度を一段と高めるのに伴い、中国は政治的に大きく不利な国になるだろう」と説明。中国は現在、世界の主要外交問題では「前向きではない」姿勢をとりながらも経済は実質的な影響を受けていないが、そうした状況は変わるだろうと付け加えた。

激しい競争が見込まれる石油・ガス貿易では、水圧破砕法の技術で先陣を切った米国が優位に立っている。BHPビリトンのアンドルー・マッケンジー最高経営責任者(CEO)は「米国は石油・ガス技術の本家であり、国内で開発を進めている」と指摘。州の規制や、土地保有者に採掘権が認められるという法体系などから、開発事業が促進されるとの見方を示した。

仮に輸出規制が緩和されなかったとしても、米国の石油・ガス生産量の増加は石炭から石油製品に至る相場に既に影響を及ぼしている。米国への輸出に依存していた国は圧迫感を感じており、新たな買い手を探している。

石油輸出国機構(OPEC)の議長代行を務めるナイジェリアのアリソンマドゥケ石油相は、米国の増産が「世界的に原油の全市場に影響と与えている」と指摘。「誰もが自らの方向性を変えるのに苦戦している」と話した。

(Terry Wade、Ayesha Rascoe記者)

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