ここがヘンだよ!日本企業のイノベーション 科学者集団が考えた、面白い仕事の作り方

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そして、廃棄されていたシークワーサーやアセロラのしぼりかすを改良し、リバネスの発酵学のノウハウを活用して、自前でエサを生産することで、徹頭徹尾、福田の手による豚を作ることに成功したのです。今では、その豚をリバネスの飲食事業の店舗である「梅酒ダイニング明星」や、福田自身が営業した先へ卸し、実際に消費者に届けています。

とはいえ、ここまででは熱い男による、よくある情熱物語にすぎません。これをどうビジネスに発展させるかが、経営者の手腕が問われるところです。

さて、そこで僕はどうしたか。この福田が切り開いた一連のプロセスを通して、リバネスには、今までまったくかかわったこともなかった養豚のノウハウが備わったことになります。じゃあ、この仕組み自体を売ればいいと考えました。

アイデアをマネタイズする具体的な方法やリバネスのほかの事例は、著書『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』にも詳しく記されています

廃棄物を利用して自前でエサを作り独自のブランド豚を開発するというパッケージを売ることにしたのです。そして、たとえばカツサンドで有名な井筒まい泉さんをご存じの方も多いと思いますが、そこではこのモデルで生産した「甘い誘惑」というブランド豚を商品に利用しています。

ここでも、根底にあるのはQPMIの発想です。「地域の養豚農家を助け、畜産業を活性化できないか」という「Q」(疑問や課題)がある。アイデアを考えた社員には「これを自分で実現したい」という「P」(情熱)がある。

ここに、上司が最初のメンバーとなって、どういう「M」(使命)を掲げればいいか、一緒に考える。あとは、考え続けることでなんとか答えを見つけ、「I」(革新)につなげていく。

何よりもまず、新しいこと、面白いことをやってみよう、という社員個人のパッションが大事なのです。そのパッションを潰さないように考え続けることで、新しいアイデアは生まれてくるものだし、マネタイズの方法もひねり出せるものだと、私は思っています。

丸 幸弘 株式会社リバネスCEO

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まる ゆきひろ / Maru Yukihiro

株式会社リバネス代表取締役CEO。1978年神奈川県横浜市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。

リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。日本初の民間企業による先端科学実験教室を開始する。中高生に最先端科学を伝える取組みとしての「出前実験授業」を中心に200以上のプロジェクトを同時進行させる。2011年、店産店消の植物工場で「グッドデザイン賞2011ビジネスソリューション部門」を受賞。

2012年12月に東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナの技術顧問や、小学生が創業したケミストリー・クエスト株式会社、孤独を解消するロボットを作る株式会社オリィ研究所、日本初の遺伝子診断ビジネスを行なう株式会社ジーンクエストなど、15社以上のベンチャーの立ち上げに携わるイノベーター。

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