ここがヘンだよ!日本企業のイノベーション 科学者集団が考えた、面白い仕事の作り方

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高度経済成長期、会社が安定しておカネを稼ぐことを目標にしていた右肩上がりの時代には、これはひとつの方法だったかもしれません。しかし、21世紀は違います。10年先に会社が存続しているかわからなくなり、おカネよりもやりがいを考えている若者が多くいる時代です。そして、行動力の源となるパッションは、人によってかなり異なるのです。

そのパッションを把握することなしに、給与やインセンティブでモチベーションを上げようとしても持続するはずがありません。「モチベーションコントロール」ではなく、「パッションコントロール」にシフトしなければ、革新的なアイデアは絶対に生まれてこない、と思います。

部下が意欲的にパッションを持って「こんなビジネスをやりたい」と提案してきたとき、どんな返答をしているでしょうか。経営者や上司が「市場規模はどのくらいか」「事業計画はどうなっているか」と返すのでは、たいへんに非生産的です。誰も思いつかなかったイノベーションを起こそうとするアイデアですから、数字は未知数で当然だからです。

社員に返すべき質問は3つ。

「それ、新しいの?」
 「それ、面白いの?」
 「それ、やり続けられるの?」

この3つの質問にしっかりとした理由をつけて「はい」と答えられるのであれば、「じゃあどうやってビジネスにしていこうか」と一緒に考えるのが、イノベーションを起こす組織における上司や経営陣の仕事だと私は思うのです。

とはいえ、誰もが革新的なアイデアを思いつくわけではありません。やる気はあっても、取り組むべき課題(Q)を見つけられない社員もいるでしょう。情熱を傾けるような問題意識を社員に芽生えさせるためには、今やっていることとまったく別の仕事にかかわらせるのが有効です。

リバネスでは、社員50人で、事業部をまたいだ200以上のプロジェクトをつねに同時進行させています。たとえば教育事業ばかりやっている社員には、人材開発やメディア事業をやってもらう。まったく予期せぬことや、その社員の価値観を変えるような仕事、今までやったことのない仕事を意識的に課すことで、小さな問題意識がいくつも集まり、いずれその人にしか見つけられなかった課題が生まれてくるのです。

パッションがある人間は、マネタイズに必死になる

そして、社員が出してきた面白いアイデアを、どうビジネスに変えていくかは、会社の最大の役割です。社員のパッションを大切にすることは、このマネタイズという面においても大きな効果をもたらします。

やりたいことがはっきりしている人間は、それを実現するための手段として、持続させるための仕組みを必死に考えます。自分のやりたい企画を実現したり、持続させるためには、当然ながらおカネをどこかで稼ぎ出してくる必要がある。

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