スズキの「初代ハスラー」は何を残したのか 新型登場で振り返るその功績とライバルたち

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「効率を求めてワゴンRと製造ラインを共用したのが間違いだった」

ハスラーのデビューからしばらくして、とあるスズキ関係者は筆者にそう語った。

デビュー当初のハスラーは、長い納車待ちが発生。ワゴンRもフル生産だったから製造ラインのキャパシティーに余裕がなく、おなじ製造ラインで製造していたハスラーは爆発的人気となっても増産への対応ができなかったのだ。スズキの想定を大きく超えるオーダーを受けたものの、たくさん作りたくても作れなかったのである。

そんなハスラーが軽自動車界に与えた影響は大きかった。

ダイハツや三菱もハスラーの市場に参入

ダイハツは、2015年9月にクロスオーバーSUVスタイルの「キャスト アクティバ」を投入。ただし、迷いがあったようで、クロスオーバーSUV専用ボディではなく、ひとつのボディにスポーツタイプの「キャスト スポーツ」やエレガントな「キャスト スタイル」も同時設定。そんな迷いが「中途半端」と受け取られたのか、ハスラーほどのヒット作とはならなかった。

ダイハツ「キャスト」は「ハスラー」登場の翌2015年に発売された(写真:ダイハツ)

投入翌年度となる2016年4月~2017年3月(2016年度)の年間販売台数を見ると、ハスラーが8万4624台なのに対し、キャストはスポーツやスタイルも含めたシリーズ全体でも5万8029台に留まる。その翌年度(2017年度)を見ても、ハスラーの6万4767台に対し、キャストシリーズは4万2535台だ。

さらに三菱も、2019年春にデビューした新型「eKシリーズ」に、「eKクロス」と呼ぶSUVクロスオーバーモデルをラインナップさせた。eKアクティブの、満を持しての再来と言っていいだろう。

こちらは、15年前とは異なり時代がクルマについてきたこともあって、eKアクティブ時代と比べると人気を獲得。2019年11月までの平均をみると、標準タイプとなるeKワゴンとeKクロスの販売比率は38:62であり、50:50と考えていた三菱自動車の想定を大きく超えているという。

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