2060年、日本の1人当たりGDPは中印に勝てるか 未来の世界経済の中心は、欧米から中印へ

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以上で見たのは成長率ですが、GDPの額そのものは、どのようになるでしょうか?

各国のGDPの大きさを比較するには、共通の尺度でGDPを表す必要があります。しかし、OECDの予測では、ドル建ての名目GDP予測値が示されていません。

そこで、2020年におけるドル建ての名目GDPの値と、図表2で見た各国通貨建ての名目GDPの変化率とから、2040年、2060年のドル建てGDPを計算しました。結果は、図表3に示すとおりです。

この値は、為替レートが現在から変化しなかった場合のドル建てGDPということになります。

図表3に示した4国間の順位を見ると、2020年においては、アメリカ、中国、日本、インドの順ですが、2040年になると、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国になります。また、インドが日本を抜きます。この結果、GDPの順は、中国、アメリカ、インド、日本となります。

2060年においては、順位は変わりませんが、中国とアメリカの差が開き、インドとアメリカの差が縮まります。

中国のGDPは、2020年にはアメリカの76.3%ですが、2040年にはアメリカの1.2倍となり、さらに2060年にはアメリカの1.3倍となります。

2060年はアメリカとインドが拮抗

インドの成長ぶりは印象的です。2020年ではアメリカの15.6%でしかありませんが、2040年には44.5%となり、さらに2060年には86.1%となります。

2060年の世界においては、インドとアメリカの経済規模が拮抗するようになると見られているのです。

中国とインドのGDPの合計は、2020年にはアメリカの91.9%ですが、2040年には1.7倍となり、さらに2060年には2.2倍となります。

こうして、世界経済の中心が、欧米から中国、インドなどのアジアへと移行するでしょう。世界経済の様相は、現在とはかなり異なるものになると考えられます。

残念ながら、日本の相対的地位は低下します。

中国のGDPは、2020年には日本のGDPの3.1倍ですが、2040年には5.6倍、2060年には7.2倍に広がります。

なお、図表2に示したように、OECDの推計では、日本の名目成長率は、2020年から2040年までも、2060年までも、およそ3%程度の値とされています。

しかし、IMFによる2020~2023年の推計値では、1.77%でしかありません。これと比較すると、OECDの推計は過大推計である可能性があります。そうだとすると、日本経済の地盤沈下は、上で見たよりもっと深刻なものとなる可能性もあります。

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