小林武史「生きる実感を得るためにできること」 音楽プロデューサーが本気で挑む第二の活動

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――そういった一連の活動と並行して、小林さん率いる株式会社KURKKUでは、レストランやフードストアの事業も行っています。2011年秋には、新商業施設「代々木VILLAGE(ビレッジ)by kurkku」もオープンしました。「音楽・アート・食」の領域まで事業を展開したのは?

実のところ、「ap bank」で融資した市民やNPO団体の環境プロジェクトも、ブレイクスルーするのは簡単ではないんです。僕たちもアイデアを出したり、人を紹介することはありますが、結局はそのプロジェクトがうまくいくことを祈るしかない。

そうこうしているうちに、うちのスタッフの中から「自分たちも何かできることをやりたい」という話が出てきた。そこで、都心でサステナビリティを意識した商業施設を展開してもいいのでは?と思って始めたのが、「代々木VILLAGE」です。

大切なのは、理想と現実のバランス

実は、株式会社KURKKUでは最初、書店、雑貨屋、飲食店を神宮前に分散させてオープンしたのですが、結果的にうまくいったのはレストランだけでした。ところがその数年後、リーマンショックの影響でレストランの売り上げも相当落ちてしまった。

その頃から、町中に激安ショップがどんどん増え、生活費や食費を切り詰めなければいけない人が増えていく中、多少高くてもおいしい有機野菜のよさを伝えていくことの虚しさを感じた時期もあります。大切なのは、理想と現実のバランスなんだなって。

やっぱり、人間が本来あるべき感性や感情を大切にして、本当の意味で生きていくのは、ある程度、余裕がなければできないことです。僕も、「余裕があるからap bankとかやってるんでしょ?」と言われれば、まったくそのとおりで、否定はできませんから。

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