第2回 ドイツのサッカークラブ、始まりは体操だった?

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今からさかのぼること178年前

気になるのがチームによって名前に「体操」や「スポーツ」という名称がはいっていることである。
 ドイツスポーツ連盟の資料によると、初めてのスポーツクラブは今からさかのぼること178年前、1836年のハンブルクにできた。現存するこのクラブの競技は漕艇であるが、ドイツのスポーツクラブには体操からはじまり、扱う競技数を増やして総合型のスポーツクラブになったようなところも少なくない。

だからドイツの町で、ちょっと注意していると「TV(テー・ファウ)」という文字が目にはいってきたり、耳にしたりする。「トゥルネン・フェライン(体操クラブ)」を省略したもので、サッカーチームでも略称にTがついていれば、たいてい体操クラブから発展してきたといったような歴史があるはずだ。
 「TSG1899ホッフェンハイム」も現在はサッカーのみになっているようだが、ある時期まで体操や他の競技を扱っていた総合型スポーツクラブだった。サッカーは複数ある競技の一部だったわけだ。

よく知られるようにJリーグが日本に取り入れられた時に参考にされたのがドイツのサッカークラブだったが、こうして見るとドイツのサッカーチームは長いスポーツクラブの歴史の中にあるということがよくわかる。

また、ドイツサッカーは確かに地域密着志向が強い。いや、むしろ愛郷心の一角をしめているのがサッカーチームであり、やや乱暴な言い方をすると、その他のスポーツクラブも同様だ。
 裏をかえせばJリーグはブンデスリーガを参考にしながら作られたわけだが、地元との密着という方針を進めていくには、ベースになる愛郷心は日本でどうなのか、そしてサッカーとどうリンクさせていくかという視点が重要なのかもしれない。

ともあれ歴史の長さと愛郷心を併せて考えると、各地域にあるスポーツクラブがドイツのスポーツ文化を作ってきていることは容易に想像ができる。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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