令和の日本に異変「住みたい街」が大きく変わる 厳選!2020年版ゆく街・くる街

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駅近くの広い土地の活用といえば近年はタワーマンションを建てるのが定番だが、在日米軍基地の横田飛行場、自衛隊の立川飛行場に近いことからここには高層建築物は建てられない。また、国有地落札時の条件として住宅不可かつ文化施設を作ること等の要件があり、その結果が一部には無謀の声もある多摩最大のホールなどになった。   

ここで注目したいのは街区単体ではそれほど大きな収益が見込めないものの、それをわかったうえで立川市の中央にすでに94haもの土地を持つ、立川の大家ともいうべき立飛ホールディングスがこの街区に取り組んだことである。

町田や吉祥寺等の他の多摩地区の拠点と比べると大規模商業施設に商店街、飲食店街、オフィス、国の機関、オフィス街と多様性があるのが立川の特徴(筆者撮影)

1924年創業の同社の前身は軍用機メーカー。終戦後、接収された工場その他の土地や建物を活かして1976年に不動産業に転じており、2015年以降はららぽーと立川立飛、人工砂浜を備えたタチヒビーチ、男子プロバスケットボール・Bリーグのアルバルク東京の本拠地アリーナ立川立飛など街の賑わいに資する施設を次々に作ってきた。街が賑わうことが長期的に大家のメリットになるという考えからである。

とすると、立川駅近くの開発としては最後となるGREEN SPRINGSが、立川全体の開発として最後であるわけはない。その奥には同社が所有する広大な、今回の敷地の何十倍もの土地がある。時間はかかるかもしれないが、きっと変わるはず。どう変わるか、楽しみである。

都心に「消費」を持っていかれる懸念


相鉄・JR相互直通運転~「便利になった」は喜ぶべきことか?

最後にひとつ、個人的な懸念を。2019年11月30日にJRとの相互直通運転が始まった相鉄線である。2022年下半期開業を目指して東急線との相互直通運転も予定されており、都心直通による利便性向上が見込まれる。だが、路線が長くなればなるほど混雑はひどくなり、遠方の事故の影響も受ける。

また、さほど魅力的な商店街、商業施設がない同沿線では消費が都心に持っていかれる可能性もありうる。現在、開発が進む海老名駅前には多数の商業施設が集まっているが、他のショッピングモール、アウトレットと比べると独自性があるとまではいえない。

今後、さらに住宅価格等が下落した場合、より都心にという動きも出よう。利便性で選ばれる街は利便性で捨てられるのだ。だとすれば利便性以外の魅力が必要だろうが、それを生み出せるかどうか。便利になったと喜んでいる場合ではない。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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