マカオに登場「ゆりかもめの兄弟」新交通の実力 カジノの街に初の軌道系交通機関が開業

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プラットホームはホームドアを完備している。当面は2両編成での運行のようで、乗降口は4カ所(1両2カ所)。駅名板や列車案内モニターなどは中国語(繁字体)、ポルトガル語、英語の3言語で表示している。

3言語表示の車内モニターと路線図(筆者撮影)

アクアティック・ホワイト(Aquatic White)と呼ばれる薄い水色に塗装された「オーシャン・クルーザー」は正面の窓が大きく、無人運転で遮るものがないため展望がよい。座席はロングシートタイプの金属製イスを1両あたり22席設置している。

立ち客用の設備としては吊り手のほか、乗降ドア付近の通路中央に円形のハンドルが2つ付いた握り棒も設置している。2両編成だが、車両間に貫通扉はなく移動はできない。

扉の上と前後の計6カ所にはモニターがあり、路線図や停車駅を表示する。車内放送も案内表示と同様、3言語でのアナウンスだ。車内での飲食は禁止されている。

海やカジノを眺めながら

走り出すと、発進時の加速はよいものの、軌道の凸凹のせいか多少の揺れは感じる。ただ、高架線を走るので見晴らしは良く、海やカジノ地区の建物に併設されたゴンドラなども見えて車窓風景は飽きない。

ドア付近には円形のハンドルが付いた握り棒がある。ロングシートのうち3席分は車イス対応スペースで跳ね上げ式になっている(筆者撮影)

沿線にはまだ開発中の地区や建設中のカジノ、高層アパートなどが並ぶほか、大学や競馬場への玄関となる駅もあるので、今後多くの利用客が見込まれると思われる。終点の海洋駅には約22分で到着した。

中国の国家戦略プロジェクトである広東省、香港、マカオを一体化し開発するグレートベイエリア(粤港澳大湾区)構想の重要な交通ネットワークとして、広深港高速鉄道や世界最長の海上橋である港珠澳大橋が開通してから1年余り。マカオがポルトガルから中国に返還されて20年の節目となる12月20日を目前にして、新たな市民の足が開業した。

終点・海洋駅の少し先には西湾大橋が見える。今後はマカオ半島側への早期延伸を期待したい。

三浦 一幹 トラン・デュ・モンド代表

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みうら かずみき

1960年東京生まれ。世界の鉄道フォト・ライブラリー「トラン・デュ・モンド」代表。世界各国の鉄道取材・撮影にあたる。海外鉄道研究会、日本旅行作家協会会員。

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