第1回 「志」とは何か

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志が向かう先

では、その小志の積み重なりには、なにか方向なり、意味なりがあるのでしょうか。
調査から、志の成長には一定の方向性があることが見出されました。その方向性とは、「自律性が高まる」、「社会性が高まる」の2つです。

● 志は自律性を高めながら成長する
● 志は社会性を高めながら成長する

自立性とは、「自分で自分を律する=自分で自分の進むべき方向を決めるということ」である。「自律性」の発展は以下のような段階に区分することができます。

● 誰かの決めた規範に合わせていく(適応)
● 自らで規範を選び、自らをハンドリングしていく(自立)
● 自らが決めた規範に、他者を導いていく(指導)・他者の自律性が高まることを支援する(支援)

図3:志の成長の方向性-2つの軸

「社会性」とは、自分を起点に、自らが責任を持とうとする範囲を拡げていこうとする心の動きを意味しています。社会性が増す、社会性が高まるということは、利己的な自分から利他的な自分への変化を意味するのです。

そしてこの自律性、社会性を軸にとると、図3に示すように志の成長の方向には様々な道筋があることがわかるのです。自分がどんな道筋を経てこれまで志を育ててきているのか、今後育てていきたいかを考える際の参考にしていただければと思います。

さて、ここまで『志を育てる』の内容をレビューしてきましたが、いずれにしても志は非常に個人的な話であり、他人と比べるようなものでは決してありません。
「あなたの志と比べると私のなんて志とは呼べない」とか、「まだ小さい志だから言いたくない」など、そんなことを考えたり、口にしたりする必要は全くないのです。

「一定の期間、人生をかけてコミットできるようなこと(目標)」

自分の人生の中で、この定義に合致する時期を今一度明確にすれば、現状、志と呼べるようなものを持っていないとしても、次なる志を育てる旅を始めることができるのです。

次回は、創業15年で、売り上げ100億円を超える日本有数のウェディング、レストラン、ホテルなどのサービスを提供する会社を作り上げた株式会社ポジティブドリームパーソンズ代表取締役社長の杉元崇将さんを取り上げます。
http://www.positive.co.jp/
 

田久保 善彦 グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

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田久保 善彦 / Takubo Yoshihiko

慶應義塾大学理工学部卒業、学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、現在グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長。経済同友会幹事、上場企業およびベンチャー企業外取締役等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』(東洋経済新報社)等、多数。

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