特捜の看板には無理がある--『検察の正義』を書いた郷原信郎氏(弁護士、名城大学教授)に聞く

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 だから、ルールを全体として経済社会の中で守っていく。そういう目的のために刑事罰が使われる。刑事司法としての経済司法は、そういうものでなければいけないはず。そこには価値判断が必要だ。

カルテル、談合が悪い、あるいはインサイダー取引、有価証券報告書の虚偽記載が問題といっても、社会の価値判断の下でどう事実を認定し、法律に照らして処罰すべきか。

ここは検察として経済社会の実態をしっかり理解して、どの程度悪質か重大かということを含めて評価し、法を当てはめていかなければいけない。そうなると、検察はもっと開かれた感覚、開かれた目をもっていなければいけなくなる。

--単純な一罰百戒ではなく、「一罰一戒百戒」で、とも。

私は一罰百戒は一罰一戒百戒でないといけないと思っている。一罰が一罰で済んでしまうと思ったら残りの九九は、あいつは運が悪かったなと思うだけで何も改めない。しかも、つまみ食いしやすいところだけを捕まえたら、その本人はどう思うか。納得できないといって徹底的に抗戦する。なんで自分だけがやられるのかということで納得も反省もしない。

だから、百の違反行為がある中で、まず可能な限り検挙できる悪質重大なものから摘発していく。それを制裁対象にすれば、一罰の対象になった側もそれでは仕方がないなと思って受け入れ、残りの九九も改めるだろう。そういう意味で戒めになる。

私はやはり一罰一戒百戒でなければいけないと、そういう意味で言っている。

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