“飲料自販機”設置競争の熾烈、転機に立つドル箱事業 

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だが、飲料の自販機販売は09年になって不況の影響を受け、かつて経験したことのない落ち込みを見せている。特に事務所、工場など職域に設置されている自販機販売の落ち込みが大きい。コカ・コーラ セントラルは神奈川から愛知県までの6県を販売エリアにしているが、自動車関連の職域を例にとると、減産の影響を受けて1~3月の自販機販売は前年比30%も減少した。その後減産緩和で戻ってはいるが、まだ15%減のレベルという。

このほか、消費者の節約志向の影響も強く受けている。緑茶系飲料を例にとると、スーパーでは2リットルPETボトル入りが178円で買える。PB商品だと138円という安さだ。ところが自販機だと500ミリリットルPETボトル入りは150円の定価販売である。コカ・コーラ セントラルの高橋社長は、「消費者が価格差に敏感となり、自販機で買うことを控え始めている」と低迷の原因を指摘する。

ある有力ボトラーは4000人の消費者の飲料購入行動をモニターしている。最近の調査では、約1000人の消費者がスーパーで購入した2リットル入り飲料を魔法瓶に詰め替えて職域などに持参していたことがわかった。飲みたいときにすぐ買える利便性を盾に、高い販売価格で販売できたのが自販機だった。しかしこの不況下、消費者が手売りとの価格差を受け入れなくなっている。

自販機を無償で貸与 低稼働自販機も急増

国内最大のボトラー、コカ・コーラウエストの場合、自販機での販売数量は30%ほどだが、粗利益では70%前後を占めているという。自販機販売の落ち込みの結果、12社あるコカ・コーラボトラーのうち、09年12月期上期決算で営業黒字を確保したのは、1~2社ではないかとみられている。ボトラーからは、「このまま事態を放置すれば、減価償却費などの固定費のかかる自販機チャネルは収益柱の地位を降りて、“鉄の十字架”になりかねない」と危惧する声が出ている。そうした危機感から、コカ・コーラ セントラルの高橋社長は「業界が手売り向けの過度の販売競争を是正して店頭価格を戻すことが、自販機販売回復の特効薬になる」と強調する。

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