井上尚弥が「他人との比較」をムダだと思う理由 「リング上のパフォーマンスがすべて」

拡大
縮小
ボクシングWBAスーパー・IBFの世界バンタム級チャンピオンの井上尚弥氏が語ってくれた、彼の父が示してくれたすばらしい人生論とは?(写真:AP/アフロ)  
誰しも自分と他人を比較して、うらやんだり、ねたんだりした経験はあるはず。だが、ボクシングの世界WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者・井上尚弥氏はそうした「他人との比較に意味はない」と考える。26歳の彼がそこまで達観できる理由とは?
自身の「勝利を引き寄せるための思考術」を記した『勝ちスイッチ』から一部抜粋、再構成してお届けする。

他人に興味がない。テレビ局などから「誰か興味のある人はいますか?」「会いたい人がいれば対談企画をしたいのですが?」とオファーをいただく機会が少なくないが、失礼ながらすべての企画を断っている。何かを聞かれれば答えられるが、他人に興味がないので、対談方式の企画になってしまうと自分から聞くことが頭に浮かばないのだ。

昨年オフに、メジャーリーグで二刀流として大活躍をされたエンゼルスの大谷翔平選手とプロスポーツ大賞の表彰式で会う機会があった。控室で一緒になって、試合のことをいろいろと聞いてくれて、「今度、日本でもアメリカでも機会があれば試合を見に行きたいです」とも仰っていただいた。

「ぜひ見に来てくださいね!」

僕は、そう答えたが、野球をほとんど知らないため、こちらから質問を投げかけることはできなかった。同じ日本人として、メジャーリーグという世界のトップが集まる場所で、二刀流という誰も成し遂げていないことをやってのけた大谷選手は偉大だしリスペクトしている。だが、その大谷選手にさえ、僕の好奇心の針は動かなかった。相当なものだろう。

「他人と比較する必要はないんだよ」

僕は、そんな自分の性格が嫌いではない。子どもの頃からボクシングテクニックの部分、部分を参考にしている人はいるが、誰か特定の世界チャンピオンに熱を入れたわけでもなければ、目標にしたわけでもない。そういう僕のバックボーンも「他人に興味を持てない」性格形成につながったのかもしれない。

人は人。自分は自分。

「他人と比較する必要はないんだよ。他人をうらやむんじゃないよ」

それが父の教えだった。

ボクシングの書籍に付き物のハングリーな物語は僕には存在しない。父は、「人をうらやむな」と、口を酸っぱくして言っていたので、僕の子どもの頃の生活が、中流なのか、世の中のどこにあてはまるかにもまったく興味はない。ただ何不自由なく、幼少期から中学、高校、プロへ入るまでを過ごした。人生に苦労はしていない。好きなボクシングに専念できてきた。

次ページ「リング上のパフォーマンスがすべて」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT