日本でファンによる「応援広告」が急増したワケ 渋谷や新宿などターミナル駅で起きた"異変"

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やがて、口コミでどんどん問い合わせが入るようになり、広告枠の取り合いになる状況に。JRをはじめとする鉄道各社と協力して、普段は使わない枠も急遽、開放してもらった。

同社が取り扱う広告は、小さい枠で約10万円から。都内だけでなく「◯◯くんの地元の駅にも出したい」と地方都市への出稿希望も複数あり、とても驚いたそうだ。応援広告を見るために、地方を旅するファンも多数現れた。

鉄道各社は、掲示場所をずらしながら混乱が起きないように調整したそうだ。Twitterでは各種応援ハッシュタグも盛り上がり、「広告見に行きました! ありがとう」とSNSに感謝の気持ちを投稿する、元練習生たちの姿も見られた。

韓国では定番、日本でもさらに広がるか

川尻蓮さんの応援広告も(写真:ファン提供)

ファンが自己資金でタレントの応援広告を出稿する――。韓国ではすっかり当たり前になっていて、繁華街の駅に大型広告を出すだけでなく、カフェとコラボレーションしてオリジナルスリーブを配布したり、ラッピングバスを走らせたりする。

広告代理店は対応に慣れており、枠を買ってデザインを入稿しさえすれば、スムーズに広告を掲示できるという。肖像権の課題はあるが、事務所側としてはタレントの宣伝になるので「黙認」している状況だ。

今回、応援広告ブームを巻き起こした『PRODUCE 101 JAPAN』以前にも、日本で近しい動きはあった。2016年末、SMAPファンが朝日新聞にメッセージ広告を出稿。写真は掲載できなかったが、解散が決まったSMAPのメンバーに、感謝を伝える意図で出された広告で、大きな話題となった。

最後に改めて、ファンの田中さんに出稿した理由を聞いてみた。

「自分(本田康祐さん)の広告が駅などに展開されるのを見て、喜んでもらいたかったんです。けど、利用できる写真の配布がなかったら、やろうとは思いませんでした。やっぱり、文字だけでは寂しい。なにより、ファンとしてはいろんな人に推しを知ってもらいたいので、写真が入れられてよかったと思います」

そう現在の気持ちを語ってくれた。

当然といえば当然だが、日本では肖像権の管理に厳しい芸能事務所が大半だ。だがこうした場合に写真素材の提供があれば、多くの人目に触れ、ファンではない人にまで伝わる“社会現象”を起こすこともある。必要な手続きを整備したうえで、「応援素材」としての写真の利用許諾を認めれば、今後「応援広告」はどんどん広まるのではないだろうか。

小沢 あや コンテンツプランナー 、 編集者

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おざわ あや / Aya Ozawa

音楽レーベルで営業とPRを経験後、IT企業を経て、2018年に独立。エッセイのほか、女性アイドルやミュージシャン、経営者のインタビューを多数執筆。Engadget日本版にて「ワーママのガジェット育児日記」連載中。豊島区公認の池袋愛好家としても活動している。

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