ニューエリートが自分の資産価値を隠す理由 「7つの階級」調査でわかった「後ろめたさ」

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銀行家や資本家は巨額のボーナスや配当金を要求したり、優遇税制措置を利用したり、公共部門の民営化や規制緩和から棚ぼた式の巨利を得ているが、それを単純に批判するだけではなく、もっと繊細なアプローチが必要である。

巨額のボーナスや、企業の買収や乗っ取り、そして、従来の政権が引き続き提供してきた優遇税制措置によってロンドンに移り住んだ「ノン・ドミサイル」富裕層(イギリス在住の外国人富裕層で、イギリス国内で得た収入には納税義務があるが、国外での収入や財産などに対しては免除されている)に対するモラルパニックのすべてが、このポピュリスト的な思考を助長している。

このようにポピュリスト的な思考が助長されると、上位1%を優に超える「普通の富裕層」を見失ってしまう危険がある。もちろん、ここ数十年間の経済の変化で最も大きな利益を得ているのは「超富裕層」であり、市民の厳しい監視が必要であることは疑いない。

だがそれとは別に、社会学的観点から、もっと広い視野で眺める必要がある。

私たちは今やイギリスの人口の中でかなりの部分になる「普通の」富裕なエリートの重要性に着目した。その割合が人口の約6%だとすると、その数は100万人を超える。この割と大きな普通のエリート層の人たちでさえ、ほかの人たちよりもはるかに有利な立場を享受している。

彼らの平均世帯所得(税引き・控除後)は約1200万円で、すぐ下の階級の倍に近い。平均の住宅資産価値は約4388万円で、やはりほかの階級よりはるかに高い。

貯蓄の平均も1917万円でやはり非常に多く、ほかの階級の2倍以上ある。根本的に、経済的に際立って優位にあることにより、ほかの6つの階級から懸け離れて裕福な階級なのだ。この階級は豊かな経済力を持った陽の当たる階級である。だが、それだけではない。彼らには独特の社会的、文化的な特徴がある。

エリートは階級調査に前のめりで参加する

この普通の富裕なエリートの姿は一風変わっていて、時に驚くべき表情を見せる。学歴であれ所得であれ居住地であれ、「エリート」と言われる区分に属する人ほど、英国階級調査の参加率が高かった。エリートの多くは、そのすぐ下の階級と比較しても、はるかに参加率が高いのだ。

例えば、オックスフォード大学の卒業生の参加率は、そのほかのすべての大学の卒業生のほぼ2倍だ。CEO(最高経営責任者)の参加率も、ほかの専門職や経営職と比べて約2倍である。

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