案件一掃で囁かれるサーベラス日本撤退説 国際興業、昭和地所など片付け、日本戦略見直し

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昭和地所は05年に買い増しに動いたもののすぐに断念。その後に「村上ファンド」の元代表、村上世彰氏の関連企業が“地上げ”に参入するなど、権利関係はより複雑になった。隣地を保有していた都市再生機構と共同で売却することも一時試みたが、結局、見切りをつけて単独で売却した。1月31日付で売り払った先は清水建設。譲渡額は140億円前後とされる。

東京・ニューヨーク間に認識差

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西武ホールディングスは上場できるか(撮影:大隅智洋)

西武をめぐっては再上場時の売り出し条件がまだ最終合意に至っていない。ファインバーグ氏は取得額の2倍に当たる1株2000円以上にこだわっているようだ。

一昨年に後藤社長主導で行った資産査定での価格1000円台前半と比べ、開きがある。場合によっては再上場を延期し、サーベラス側が買い付け価格を引き上げて再TOBに踏み切るシナリオもある。

ただ、最終決戦の有無にかかわらず、塩漬け案件の一掃が進んでいるのは確か。そこで浮上しているのがサーベラスの日本撤退説だ。

西武をめぐってはニューヨーク本社と東京チームの間で当初、意思疎通に問題があったとされる。鈴木喜輝氏(米KPMG出身)や三浦哲也氏(旧日本長期信用銀行出身、前国際興業副社長)ら東京チームが算定した株価は、不動産の再開発や資産切り売りを目いっぱい盛り込んだもの。が、その一部は開発規制などを考慮していない現実離れした計画だった。そこで米国本社は日本の外務省出身コンサルタントを雇い、途中で独自に情報収集を始めたようだ。

サーベラスは西武や国際興業の問題を通じ、日本企業の異質さを痛感したはず。南青山の“地上げ”をめぐっては反社会的勢力が蠢(うごめ)いていた。それらが塩漬け化を招く要因にもなった。撤退説の一方で、新たに外国人幹部を送り込んで案件探しに入るとの情報もあるが、東京チームの処遇も含め、日本戦略の見直しは必至だ。

週刊東洋経済2014年3月1日号〈2月24日発売〉 核心リポート01に一部加筆)

高橋 篤史 ジャーナリスト

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たかはし あつし / Atsushi Takahashi

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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