求められる人材評価軸の変化--ダイバーシティ推進で大きく変わる日本型人事制度 第2回(全3回)

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求められる人材評価軸の変化--ダイバーシティ推進で大きく変わる日本型人事制度 第2回(全3回)

青山学院大学 大学院国際マネジメント研究科
教授 須田敏子

 戦後、日本では、政府機関や大企業を中心に学歴・年齢・勤続年数・性別・国籍などの属人的要素に基づいて日本人・大卒・男性というコア人材とそれ以外の周辺人材(ノン・コア人材)を分ける、という人事管理が定着した。そしてコア人材として位置づけられる日本人・大卒・男性という同質的な人材の中で競争状態を作り出すことで、高パフォーマンスを実現してきた。これが日本型人事制度の強みであり、戦後の高度成長期には日本の競争力向上の大きな推進力となっていた。

求められる人材評価軸の変化
 だが、グローバル規模の競争激化、技術革新スピードの早まりといった環境変化の中でこれまで強みを発揮してきた日本型人事制度の弱みが露呈してきている。たとえばグローバル規模の競争激化の中でコスト競争力を失った日本企業が競争力を維持するためには、高付加価値製品の提供や新製品・新たなビジネスモデルの開発などがこれまで以上に重要となっており、高レベルの創造性・革新性が不可欠となる。

 いまや日本人・大卒・男性という同質的なコア人材だけでは、これらの実現は難しいことが明らかになりつつあり、異質な人材の活用が欠かせなくなってきた。そこで異質な人材を含めて活用する人事管理、つまりダイバーシティを推進する人事管理への転換が求められるわけだが、これには従来の日本型人事制度の根幹を転換する必要がある。

 転換しなければならない点は数多いが、ここでは評価軸に絞って解説する。図は人を中心とした仕事におけるインプットからアウトプットの流れを示している。インプットとは人が仕事に投入する内容であり、知識・スキル・経験といった人的要件が入る。また、背景的な要因として学歴・年齢・勤続年数などの属人的要素も含まれる。スループットとは仕事の実行過程を表し、具体的には仕事の成果(パフォーマンス)を出すための行動を示す。アウトプットはインプット・スループットの結果としてのパフォーマンスとなる。

図:仕事におけるインプット~アウトプットへの流れ
*職務が担当者に要求される人的要件・行動・パフォーマンスの内容を決定

 従来の日本型人事制度では、職能資格制度という名の下で人的要件(インプット)に焦点をあてた昇格(人材評価)が行われてきた。評価基準となる職務遂行能力を一般化することで、学歴・年齢・勤続年数などが実質的な昇格要件として重視された。これは、「経験(勤続年数)によって職務遂行能力は向上する」という仮定と、仕事では発揮されない潜在能力も含めて職務遂行能力と捉えていたことにある。

 さらに、中途採用が少なく、社内での勤続年数と年齢が全体的にほぼ一致していたため、こうした制度が受け入れられやすかったことも要因としてあげられる。
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