中国の宴会は、戦いの場だ  宴会を制する者、中国ビジネスを制す① 

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「井戸を掘った人を忘れない」文化は健在

もし、古い友人などに会うために訪問しているのに、自分たちのボスの都合がつかず不在なまま、形だけの宴会しか用意できないなら、相手のメンツを考えると次回に回したほうが良い場合もある。中国側が大物であればあるほど、名前だけでもいいから、自分の会社の役員クラスを宴会の主人として参加させないと、相手の面子をなくすことに注意したい。

たとえば、宴会の中で返杯をするときの中国側の常套句に、「では、主人の杯をお借りして乾杯をさせて頂きます」という表現がある。これは宴会を設営してくれた主人を尊重した言葉だ。宴会の場の主人も招待客も、お互いの「格」を重要視するから、格下の人が宴会の主人をする場合は、中国側としては違和感が残るのだ。

また、中国に訪問したときに宴会をしてもらったお返しの宴会を「答礼宴」と呼ぶが、日中平和友好条約を締結するまでの歩みは「答礼宴」の繰り返しで、両国のエールの交換が続いたものだ。結局は、この答礼宴にトップ同士が参加することが、刎頸の関係に近づいて行くのである。最近の日中関係をみると、このような雰囲気が感じられないのがたいへん寂しい。

少し古い言葉かもしれないが、中国では「井戸を掘った人を忘れない」という「友好第一」を大事にする価値観は、今でも健在だ。この言葉は、周恩来首相が日中国交正常化に尽力した実業家の岡崎嘉平太老に言った言葉である。それぞれの取引関係や距離感を考慮して「鼎の軽重」を問いながら、宴会を計画しなければならないのだ。

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