「防衛庁」は「防衛省」になるべきか?

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長期的かつ根本的な議論を行うべき

 防衛省への格上げ問題は、「自民党の憲法改正による自衛軍の設置」「自衛隊による国際貢献のあり方」などにもつながる話です。わが国の安全保障の根本的な議論を今こそ行うべきです。

(1) 現在の孤立主義的なブッシュ外交にどこまで追従するか(11月に行われる「アメリカの中間選挙の結果」でアメリカの外交政策が少し変わると思いますが)。

(2) 国連を改革し、いかに集団安全保障体制を確立するか(わが国の常任理事国入りを含め)といった論点をきちんと議論しなければなりません。

 このような長期的な安全保障と外交の方針を決めないまま、北朝鮮問題を取り上げて、議論を進めることの危険性を私は強く感じています。正直、政府案に反対ばかりしていると「お前は前向きでない」と言われてしまいますが、私は、「日米安保をベースとしながらも国連を使った安全保障」を進めるべきだと思っています。そのためには、「国連の分担金の半分近くを拠出する日米が共同して国連改革を行い、国連による集団安全保障体制を確立すべきです」。

 「国連憲章に規定されている国連軍をどう実現するか」、「核削減・軍縮などの活動をどう引っ張るか」、「途上国への支援をどう進めるか」などなど、国連の枠組みでできることは多々あります。

 日本は今後、「国連の安全保障と日米安全保障条約の枠組みを活用しつつ、東アジアの安全保障を確立する」という道を目指すべきであり、その意味では「防衛省の設置は、アジアの安定化という観点でマイナス」だと考えます。たとえば、「軍縮省」をもつニュージーランドのように、わが国も「防衛軍縮省」、または、「防衛・国際貢献省」に変更するなど議論が必要ではないでしょうか?

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など。

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